郊外の道路を疾走する一つの車があった。

 シンと静まり返った道路に、自動車の駆動音が響く。

 何者からか逃げるようにして速度を増す自動車の動きからは、運転手が焦っている様子が如実に見て取れた。

 逃げる自動車。

 カーブを火花を散らしながらドリフトで曲がり、急速度で駆け抜ける。

 その技量は並大抵のものがなく、運転者の能力の高さが見て取れた。

 しかし・・・・・・

 しかし、そんなマシンスペックと運転者の技術をもってしても、彼女から逃げ切ることはできなかった。


「あら、追いついちゃったわよ?」


 自動車と併走を始めたのは、信じられないことに人間だった。

 それも、年端もいかない少女である。

 なんの道具もつかわず、少女は、高速度で走る自動車と同じスピードで走っていた。

 彼女は、露出度の高い衣服をまとっており、その胸元が大きく開いている。

 その大胆な衣装を張り裂かんとしているのは、少女の年齢にそぐわないような巨乳であり、カモシカのように長く魅惑的な脚線美だった。

 陶器のような真っ白な肌。

 見る者の心を一瞬にして捉えてしまう幻想的なその肢体。

 もはや芸術品といってもいいその少女・・・・・あやねは、間髪おかずにいくことにした。

 隣りで怯えたようにジグザグ走行をし始め、なんとか逃げのびようとしている自動車。

 そこにむかって、あやねは回し蹴りを放った。


「えい!!」


 ズドッオオオオン!!


 閃光の瞬きとともに、一切の無駄のないあやねの蹴りが車に直撃する。

 大砲の直撃を受けたような轟音とともに、車が吹き飛んだ。

 人間の蹴りで、車が吹き飛んでしまったのだ。

 横転と縦転を繰り返しながら、黒の外車が吹き飛んでいく。

 そのまま永遠に吹き飛ばされるように見えた車は、大きな木にあたって、ようやく止まった。

 この時点で、すでに自動車は半壊していた。

 高級感ただよう外装はすでになく、ボコボコに変形している。

 少女の蹴り一発で・・・・・

 まだ16歳にしかなっていない、あやねの蹴り一発で、自動車がいとも簡単に半壊してしまったのだ。


「さあて、追いつめたわよ」


 嗜虐的な笑みを浮かべながら、あやねがゆっくりと半壊した車へと近づく。

 車に乗っているであろう大物の抹殺。

 それが、あやねに与えられた命令だった。

 とにかく、車を使い物にさせなくしたので、もう仕事は終了したも同然だとあやねは思う。

 だからあとは、狩りの時間だった。

 どんなふうに殺したものか・・・・・

 それが今、あやねの脳裏にしめられている思考のすべてだった。


「ほら、とっとと出てきなさいよ!」


 ガシン!!


 ふふふ、と笑いながら、あやねは半壊した車を軽く蹴る。

 半壊した車が大きく揺れて、窓ガラスが鈍く割れる音が響いた。

 そんな、車が壊れる音とともに聞こえてきたのは・・・・・


「ひいいい! ゆ、ゆるしてええ」


 という、怯えきった男の悲鳴だった。


「聞こえなかったの? はやく出てきなさいよ。フフフ、あと10秒以内にでてきたら、命だけは助けてあげてもいいわよ?」

「ほ、本当ですか?」

「ええ。わたしは嘘はつかないもの」

「・・・・・・・・・」


 嗜虐的な笑顔を継続しながら、あやねは言う。

 腕を組んでいるせいで、その大きな胸がさらに強調される結果となっている。

 十代の半ばにして、この妖艶さ。

 その童顔とあいまって、あやねの魅力はとてつもないものがあった。


「ねえ、どうしたの? はやく出てきなさいよ」


 ガシャン!!

 バギイイ!!


「ひいいいいいい!!」


 連続して蹴りをいれるあやね。

 高級外車をサッカーボールのようにして、あやねは蹴りを入れ続ける。

 力はいれてない。

 軽くである。

 手を腰にあて、ふざけるようにして、蹴る。

 しかし、その威力は相当なもので、刻々一刻と車は潰れていっていた。

 潰れる。

 年端もいかない少女の蹴りによって、車が潰れていく。

 フフフ、という妖しげな笑い声。

 間違いなく、あやねはこの状況を楽しんでいた。


「や、やめてくれえええ!!」


 と。

 息も絶え絶えといった様子で車から這い出てきたのは運転手だった。

 潰れていく車の恐怖に負けたのか、運転手は必死に外へと這い出てきた。


「俺はは関係ないんです。ただの運転手で・・・・・だから、だから命だけは」

「あら、バカ正直にでてきちゃったのね。フフフ、偉いわよ」

「た、助けてください。い、命だけは・・・・・!!」

「ダ〜メ」

「な、なにを・・・・ッギャアアア!!」


 あやねは笑みを浮かべながら、男の背後へとまわって、その動きを拘束した。

 そして、その両肩を無造作に掴むと、ぎゅううと力をこめる。

 それだけで、男の両肩は脱臼してしまったのだ。


「ヒギャアア!!」

「アハハハ! いい悲鳴ね! フフフ、もっと聞きたくなっちゃう」

「やめてええ!! ゆる、してえ!」

「じゃあ、次いくわよ」


 言うとあやねは、その大蛇のような太ももで、男の胴体を挟み込んだ。

 それとともに、ゆっくりと男に首に腕を巻き付かせる。

 男の背後から抱きしめるようにして、その体を拘束するあやね。

 16歳とは思えないほどの豊満な体に埋もれるようになってしまった男の末路は、悲惨なものになった。


「潰れちゃえ!」

「ッカハア、ヒイイイ!!」



 ぎゅうううううッッ!!!



 唐突、あやねの太ももと腕に力がともった。

 肌の露出したあやねの脚線美。

 そこに男は挟み込まれており、太ももに男の胴体が食い込んでいる。

 その力は尋常ならざるものがあって、男のアバラ骨が軋んでいくのがわかる。

 ミシミシミシミシ・・・・・

 嫌な音が男の胴体から響いてくる。

 潰れているのだ。

 そして、その怪力を披露しているのは、まだあどけなさも残る顔立ちの少女・・・・あやねの太ももなのである。

 男はその腕までも、あやねの太ももに挟み込まれているので、抵抗なんて何一つできないようだった。

 さらには・・・・・・


「ほら、息もできないでしょ?」


 あやねの言うとおり、男の首には彼女の腕が巻き付いており、ギリギリとその首を締めつけていた。

 後ろから抱きつくような形のチョークスリーパー。

 がっちりと巻き付いたあやねの二つの腕は、その逞しさとあいまって本当に大蛇のようだ。

 男の後頭部は、あやねの爆乳に押しあてられている。

 細身の体でありながら、93pをほこるその巨乳が、男の後頭部によってグニャリと変形している。

 本来ならば天国よりも極楽な二つの大きなふくらみではあるが、その感触を楽しむことはできない。

 男の首にまきつき、力をもったあやねの腕がそれを許さない。

 男の顔は一瞬にしてチアノーゼのようにして真っ赤になった。

 舌が飛び出て、涎と涙が顔を汚す。

 中年男性が、年端もいかない少女になぶりものにされる・・・・・

 後ろから抱きつかれ、胴体を太ももで挟み込まれて潰され、チョークスリーパーで首をしめられる。

 まるでそれは、補食活動だった。

 男の体に密着したあやねは、その耳元で言葉を発した。

 それは、今餌食にしている男に向けた言葉ではなく、今なお車の中に隠れている標的にむかって言った言葉だった。


「ほら、早くでてきなさいよ。貴方もこうやって、可愛がってあげるから」


 ふん! とさらに力をこめる。

 バギン!! という嫌な音が、男の胴体から響いた。

 絶叫をあげようとした男は、しかし、首を絞められているために声一つ漏らせない

 徹底的に男を壊しながら、あやねは余裕の表情で、車の中の男へ声をかけ続ける。

 
「貴方はどうやって殺してあげようかしらね。ベアバックで潰されるのがいい? 永遠と首だけ絞めて殺されるのがいい? それとも、私のお尻の下で窒息死してみる? フフフ、楽しみね」


 余興にあきたのか、あやねは、視線を車の方向へと向けながら、男を潰しにかかった。

 あやねの太ももには、男の胴体が完全に食い込み、さらにその内部を壊していく。

 腕にもさらに力がこめられ、もはやまったく息ができなくさせる。

 なんでもないように、

 余裕の表情で・・・・・

 16歳の少女は、大の男の体を壊した。

 バギイイン!! というすさまじい音とともに、男の体から力が抜けた。

 最後まであやねに相手にもされず、運転者はそのまま絶命した。


「さてと」


 出来上がった死体を無造作に放し、地面に転がったソレを踏みつけてあやねは歩を進めた。

 その先には、当然に、車がある。

 半壊した車。

 中にまだ、男を残している黒の外車。

 その前に立つと、あやねは腰に手をあて、仁王立ちのままで、


「うん。決めた。貴方は、こうやって殺そう」

「ゆ、ゆるしてええ!! か、金ならいくらでもはらう。だから、だから」

「無駄よ。フフフ、いい声で泣いてね?」

「や、やめてくださいいい!!」

「フフフ、えい!」


 バッギイイン!!!


 蹴り。

 あやねは次々と車に蹴りをいれる。

 それは、さきほどのとは異なる本格的な蹴りだった。

 あやねの脚が車に直撃するたびに、その物体はスクラップに変わっていった。


 ガッシャアアン!!

 バリイイイン!!

 ベギベギベギ!!


「ひいい!! や、やめてくれええ!!」

「ほらほら、車がどんどん潰れていくわよ。このままいったらどうなるか・・・・フフフ、分かるでしょ?」

「ひいいいい!!」


 車が潰されていく音にかき消されて、男の悲鳴はそれほど響かない。

 あやねの蹴りの力は、常軌を逸していた。

 普通、車を廃車にするためには、専用のプレス機を使用しなくてはならない。

 しかし、あやねは、ただの蹴りだけで車をスクラップに変えていくのだ。

 その車の内部に、標的である男を乗せてままで・・・・・


「ほらほら、潰れちゃうわよ〜」


 もはや車の原型はとどめていなかった。

 窓ガラスはすべて割れ、高級そうな外装はひしゃげて、四角い塊になりつつある。

 蹴りだけで、車を廃車にしてしまう少女。


「アハハハっ!!」



 ガッシャアアアン!!!

 バッギゴオン!!

 ベッギイイインッ!!



 彼女の体が躍動するたびに、その大きな胸が揺れ、魅力的といったらなかった。

 しかし、あやねが行っているのは、爽やかなスポーツではなく、車を廃車にするという作業なのだ。

 そのギャップ・・・・・

 圧倒的なまでの力を年端もいかない少女が有しているというそのギャップが、さらにあやねを高貴な存在へと昇華していた。


「さてと、お膳だてはととのったっと」


 言うと、あやねは蹴りを止めた。

 それとともに、四角い塊となった廃車にゆっくりと近づく。

 そして、車の中の男に対して、



「フフフ、まだなんとか生きてるでしょ? ちょうど貴方がいる空間だけを残して、潰していったんだから・・・・・まだ息はあるわよね?」

「ゆる・・・・して・・・・・」

「アハっ! まだ生きてる! もっとも、もう指一本だって動かせないでしょうけどね。さてと、じゃあ仕上げといこうかしら」


 無造作に、あやねはスクラップと貸した車を持ち上げた。

 四角に潰したといっても、そのスクラップは、今だにあやねの体の4倍ほどもある巨体である。

 それをいとも簡単に持ち上げたあやね。

 しかし、それだけで終わりではなかった。

 あやねはおもむろに、その廃車をかかえるようにすると、そのあらん限りの力をもって、


「潰れなさい!」


 ベギベギイイイッ!!!!


「ヒギャアアア!!!」


 抱きしめながら、あやねはさらにスクラップを潰し始めた。

 そのガラクタとなった物の中には、今だに息をした人間がいる。

 その男ごと、あやねはスクラップをさらに小さく潰していくのである。

 抱きしめるように・・・・

 求愛の手段であるはずの抱擁によって、車を完全に潰し、それと同時に男の命を刈り取っていく。


「やみゃあああ!! ゆる、ゆるぎゃああ!!」

「アハハ、車を壊すのってけっこう簡単なのね。さてと、もういい加減飽きたから、とっとと潰しちゃいましょうか」

「い、いやああああ!!」

「フン!!」



 ベギバギギギ!!

 バギバギベギバギ!!

 ベギベギバッギイイ!!!



 スクラップがその大きさを半分にするまで、あやねは力をこめ続けた。

 いつの間にか男の悲鳴は止んでおり、かわり、車の内部から、大量の赤色の液体が湧き出てくる。

 その赤が、あやねの白い陶器のような肌を汚した。

 幻想的な光景だった。

 細身の体のどこにそんな力があるのかという怪力。

 あやねは、まったく苦もせずに、車をスクラップに変えてしまったのだった。


「はい、終わりっと」


 あやねが、かつて車だったものを放すと、ドスン! というすごい音がして地面が揺れた。


「・・・・・・・」


 あやねは、手を腰にやり、仁王立ちのまま足下に転がった瓦礫を見下ろしている

 冷たい瞳で、軽蔑しきった視線で、スクラップを見下ろす少女。

 そして、口元についた男の血液を舌でペロリと舐めとると、


「ほんと、バッカみたい。全然抵抗してこないんじゃ、楽しくないじゃない」


 だらしない男・・・・・・

 と、侮蔑の一瞥を足下のスクラップにおくる。

 そして、「フン」と不敵に言い放ったあと、あやねはその場から姿を消した。

 それまで彼女が存在していたのが嘘のように、その痕跡が跡形もなく消え去る。



 あとに残ったのは、胴体を潰された男の死体と、

 スクラップにされた車の残骸、

 そして、その廃車の中で潰された、男の死体だけだった。





(続く)