差し入れがてら、12本分のスポーツ飲料を買い込み、競技場手前までたどり着いた。
外は蒸し暑く、汗がだらだらと流れてきていた。俺は冷房のきいた競技場に入ろうとドアに手をやった。その時、悲鳴が聞こえた。
「な、なんだ?」
それはこれまで聞いたこともないような恐怖に染まった悲鳴だった。
バトルファックで快感に狂った悲鳴ではなく、純粋な暴力で脅されているような悲鳴。問題は、それが男の声だということだった。
俺はゴクリと唾を飲み込んだ。気づかれないようにドアをそっと開き中をのぞき込む。隙間から見えてきたのはとんでもない光景だった。
「ほら、見ててね。次は首四の字固めっていうのをやってみるよ」
純菜が競技場の一角で座り込み、その太ももの間に男の頭部を挟み込んで締め上げていた。
4の字に組まれたムチムチの脚の中で、男がさきほどから苦悶の表情を浮かべている。太ももの中で負け犬の顔をしながら死刑執行人を見上げている男と、それをニッコリと笑いながら見下ろしている純菜。彼女はそのまま、ぎゅうううッと脚に力をこめた。
「頸動脈に太ももの内側の筋肉をあてる感じでやってみようね。そうすると、ほら見て、相手が男だろうがなんだろうが、すぐにバタバタ苦しそうに暴れて、はい、あっという間に気絶しちゃいました」
純菜の言葉どおりだった。凶悪な太ももに締め付けられた男は、ばたばたと滑稽に暴れて、すぐにコテンと意識を失ってしまった。盛大なイビキが競技場に響きわたる。
「ほら、すごい顔でしょ? 相手が男だって、しかるべき技で締め上げれば、すぐに気絶しちゃうんだよ」
純菜が太ももの拘束をほどき、男の髪の毛をわし掴みにして、宙づりにした。
失神して口からブクブクと泡を吹いている男を周囲の女子部員たちに展示する。周りの女子部員たちは「すごいすごい」とはしゃいでいた。
髪の毛を捕まれて宙づりにされている男は、よく見ると藤山先輩だった。顔は真っ赤に腫れ上がっていて、よく見ると体中アザだらけだった。まさにぼろ雑巾といった有り様で純菜に宙づりにされてしまっている。
「ほ~ら、起きてください、藤山先輩」
笑って言って、純菜が藤山先輩にビンタをし始めた。
子供だましではない全力のビンタ。純菜の綺麗な手がムチのようにしなって、男の顔に炸裂していく。すぐに藤山先輩が「ふは」と言いながら起きると、ニッコリ笑った純菜はすぐにまた男の頭部を太ももで挟み込み、首4の字の体勢になった。
「次は頸動脈を絞めないで、気道だけ絞めてみるよ。今度は太ももの内側の筋肉じゃなくて、交差させているふくらはぎの筋肉に力をこめる感じかな。そうすると、気道だけ絞めることができるの。見てて」
締め付けを開始する純菜。
変化はすぐに訪れた。滑稽に暴れ始める男。さきほどと違い気絶することも許されず「ぐっげええええ」とカエルが絞め殺されるような悲鳴をあげ続けた。半分白目をむいて正常な顔つきではなくなる。
さきほどから、男の手がペチペチと勢いよく純菜の太ももをタップし、ギブアップの意思表示をしていた。許してください。自分の負けですという敗北宣言。それは哀れにも命乞いをしているように見えた。
しかし、そんな必死の命乞いも純菜に笑って無視される。
半狂乱になった男が命をかけて必死に暴れ、なんとか純菜の太ももから逃れようとするが、それを彼女は軽くあしらい、永遠と気道だけを締め付け続ける。男の暴れる様子は滑稽で、周囲の女子部員の爆笑を誘っていた。
「はい墜ちた」
数分間の苦しみを与えられたのち、ようやく藤山先輩には気絶という救いが与えられることになった。さきほどと同じように、純菜が気絶した男の髪の毛を掴み宙づりにする。周囲の女子部員たちに成果を見せ、女でも男を絞め墜とすことができることを証明していった。
「それじゃあ、次はみんなの番ね」
純菜が笑って言った。
「残りの3人で代わりばんこで練習してみて。最初は頸動脈を絞めて気絶させてみようか。それができたら気道絞めを練習してみてね」
彼女の言葉に周囲の女子部員たちが「はい」と勇ましく返答した。
残りの3人。
それは女子部員たちに羽交い締めにされた男たちだった。彼らの顔もよく知っていた。バトルファック部の3年生。大会後に引退した先輩たちだった。彼らは1年生女子に羽交い締めにされ、背中を巨乳で潰されて悶絶しながら、藤山先輩が絞め落とされていく光景を見せつけられていたのだ。
次は自分たちの番と知ると、彼らはガチガチと震え始めた。怯えた表情で周囲の女子部員を見ている。彼らの視界には、おっぱいの大きな女子部員たちが今にも自分たちのことを襲おうとしているように見えたことだろう。
「い、いやだあああッ」
たまりかねた男が一人、強引に女子部員の拘束をふりほどくと逃げ出した。逃げ道であるドア―――俺のほうに向かって走ってくる。
「なに逃げてるの?」
「ひいいいいッ」
純菜があっという間に追いつき、男の背中に爆乳を押し当てて無力化した。
腰が抜けて地面にへたりこんでしまった男の耳元で純菜が冷たく囁く。
「お前、何様のつもりなの?」
純菜が家畜に向けて冷たく言った。その相貌には同じ人間を見るような暖かみのある雰囲気はまるでなかった。
「協力しないなら、もう射精させない」
「ひ、ひい」
「もう私たちにしてもらわなくちゃ自分で処理することもできないんだから、お前らは黙って私たちの練習台になれ」
いいな。
そう念押しをされて、先輩はコクリと頷いた。
すぐに姫華がやってきて、純菜から男を受け取る。ニンマリとした笑顔を浮かべた姫華が「お前みたいなマゾ家畜には再調教が必要ッスね」と言いながら先輩を連れていってしまった。
(な、なんだこれは)
俺は驚愕のあまり声も出なかった。
こんなことはすぐに止めさせるべきだろう。それなのに、俺の膝はガクガクと震え、一歩も踏み出すことができなかった。
「健ちゃん、そんなところで立ってないで、入ってきたら?」
ビクンと震える。
純菜のほうを見ると、彼女はこちらをニッコリとした笑顔で見つめていた。気づかれていたのだ。俺は観念して競技場に入った。
「おい、純菜、これはどういうことだ?」
「どういうことって?」
「いや、なんで格闘技の練習してるんだよ。ここはバトルファック部だぞ」
そこで純菜がニッコリと微笑んだ。
その笑顔は先輩たちが今も女子部員によって絞め墜とされ、断末魔の悲鳴をあげている場所にそぐわなくて、俺は恐怖を感じた。
「大丈夫。これもバトルファックの練習なんだよ」
「れ、練習?」
「そう。プロには総合格闘技の技もOKなルールがあるよね。もちろん、高等部でそのルールは適用されないけど」
「そうだよ。だから、俺たちが格闘技の練習したって仕方ないじゃないか」
「違うの。これは試合で使うために練習してるんじゃなくて、自信をもってもらうためにやってることなんだ」
純菜がニッコリと笑った。
「女の子たちに、自分たちはいつでも男の子を絞め墜とすことができるんだって、そう確信させて自信をもってもらうためにやってるんだ」
「な、なんのために」
「ほら、男子って、心の底ではバトルファックに負けても暴力に訴えれば最後に勝つのは俺だって思ってるじゃない? それは女の子のほうも同じでね、心の底ではどこかビクビクしてる。バトルファックで勝っても、どこか別の場所で復讐されるんじゃないかってね」
純菜はまるでとびっきりの思いつきを披露するように続けた。
「だからこその格闘技の技なんだ。自分たちだって、男の子のことをあっという間に絞め墜とすことができるんだって自覚すれば、男の子に変な劣等感をもたなくてもすむ。そうすれば自信になるんだよね。ほら、みんなの顔、見違えたでしょ」
そう言って純菜が競技場を見渡した。
そこには、獰猛な笑顔を浮かべて男子部員たちに群がる女豹たちがいた。普段は大人しい女子部員も、目をランランと光らせ、嬉々として男の首に脚をからませ、力一杯絞めつけている。11名の女子部員全員が、まるで屈強なアマゾネスのように見えた。
「で、でも、こんなことに付き合わされる方はたまったもんじゃないだろう。先輩たちだって嫌がってるじゃないか」
俺は意を決して言った。
その場の雰囲気に流されそうになるのを必死にこらえながら、その場にいる4人の先輩たちの身を案じるのだが。
「ああ。あいつらなら大丈夫だよ。というか、これはあいつらの希望でもあるんだ」
「ど、どういうことだよ」
「うん。ま、大会前に徹底的に搾り取っていた後遺症なんだけどね、壊れるまでいかないにしても、あいつら、私が犯さないと射精できない体になってるんだよね」
ドクンと俺の心臓が鼓動する。
「大会終わって、引退してから、自分でオナニーしても射精できなかったみたいなんだ。それで、あいつら、私に泣きついてきたんだよね。でも、部活引退した壊れかけの男になんて興味ないからさ、断ったの。そしたら、あいつら、私に土下座して頼んできたんだよ」
なんでもします。
なんでもしますから射精させてください。
「悩んだんだけど、いい機会かと思って、最初は私が格闘技の練習台として使ってたんだ。ほら、BL学園の人たちも夜討ちをしかけてきたように、いつ襲われるかわからなかったからね。それで、何度も絞め墜としているうちに、もうすっかり男としてのプライドも人間としての尊厳もなくしちゃったみたいで、今では私の言うことをなんでも聞く家畜になっちゃったんだよね」
見てて。
そう言って純菜が藤山先輩のことを呼んだ。その声に、純菜に絞め墜とされ意識を朦朧とさせていた藤山先輩がふらつきながら純菜の足下まで来た。彼はなんの躊躇もなく純菜の足下で正座すると、なんの迷いもなく彼女にむかって頭を下げ、土下座をした。
「座布団」
冷たい声が言った。男は自動的に動き、仰向けに寝そべった。その腫れ上がった顔に恍惚とした表情が浮かんでいるのが気持ち悪かった。
「よし」
まるでペットの芸がうまくできた時のように言って、純菜が勢いよく男の顔面に腰をおろした。顔面騎乗。純菜の巨尻が、貧欲に男の顔面を押し潰している。巨大な柔らかそうな桃が、みっちりと男の顔面に吸いついていた。
「な、なにやってるんだよ純菜」
「ん? 座るには座布団があったほうがいいでしょ? だから徹底的に躾たんだ。どこでも座布団になれるように、徹底的にね」
「そ、そんな。先輩の男に対して、そんなこと」
「大丈夫。もうこいつらはただの家畜。バトルファック部の備品のようなものだから、心配する必要なんてないんだよ。ほら、見て。こいつのち●ぽ」
そこで純菜が男の一物を見下ろした。
俺もそちらに目をやる。全裸に剥かれた男の下半身には、敗北の白い旗が滑稽に屹立し、主人にこびるようにパタパタと動かされていた。
「ね、こいつも喜んでるんだよ。もう、わたしが与える全ての刺激がこいつにとって快感なんだ。そんな気持ち悪いマゾ家畜に敬意を払う必要なんてないんだよ? ふふっ、この前なんか、こいつ、私が厳しく叱責しただけで射精しちゃったの。もう人間終わってるよね」
純菜がニッコリと笑っている。
優しそうに、見る者の心を溶かす満面の笑み。しかし、その尻の下には男の顔面がある。純菜は俺のほうを向いたままで、早くも酸欠で気絶しそうになっている家畜のために少しだけ尻を動かして息継ぎをさせ、すぐにドシンと尻餅をつくようにして顔面騎乗した。男が苦しみのあまり呻く。そのギャップはどこか蠱惑的で、俺は目の前にいる幼なじみが男を堕落させるサキュバスのように見えて仕方なかった。
「まあ、やりすぎて殺しちゃわないように注意はしてるからさ。健ちゃんも、ここで一緒に見守ってくれない?」
顔面騎乗中の純菜が言う。
「ほら、いつまでも立ってないで座ってよ」
そう言われて茫然自失としていた俺は促されるままに彼女の隣にあぐらをかいて座った。ニッコリと笑って嬉しそうにする純菜。
彼女は男の顔面を座布団にして女の子座りをしている。そのせいもあって、俺よりも高い位置に座っていた。対して、俺は競技場の地面に直に座っているだけ。それが何故か、俺には象徴的なことのように思えた。俺と純菜の格の違いみたいなものを俺は自分勝手に感じていた。そんなふうに隣の幼なじみに圧倒されていると、一人でに俺の下半身が反応するのが分かった。
俺は自分の胸に生まれた感情に名前もつけられず、戸惑いながらも、純菜と隣あって、競技場を見渡した。
*
俺の目の前には異次元が展開されていた。
日常や常識といったものがどこかに消えてしまった光景。
男たちが裏返った悲鳴をあげ、必死に命乞いしながら、容赦なくおっぱいの大きな少女たちに絞め墜とされ、盛大なイビキをかいていく。
特にすごいのが麗美だった。
彼女は180センチを越す長身とその長い脚を用いて、男たちを暴力でも圧倒していた。男を傷つけることになんの躊躇も見せなかった。彼女の肉感たっぷりの脚が男の首を締め上げると、その皮下脂肪の底から発達した筋肉が浮かび上がり、情け容赦なく男の意識を奪っている。その間も彼女はいつものポーカーフェイスを崩すことがなく、淡々と男を墜としていった。
「絞め技は初めてですが、簡単ですね。ほら、センパイ。早く起きてください。次は気道を締め付けます」
冷たい麗美の声が聞こえてくる。
頸動脈を絞めて一瞬で意識を奪うことに成功した彼女は、気道だけを絞める練習を始め、それもあっという間にマスターしてしまった。それどころか、男を絶対に気絶させずに、少し息継ぎをさせながら、永遠と締め付けを続けることにも成功してしまう。麗美の筋肉質な太ももに締め付けられた男は、情けない表情を浮かべながら、必死にタップを続け、麗美に命乞いをしていた。
「すごいでしょ、麗美ちゃん」
俺の視線に気づくと、純菜が得意げに言った。
「彼女、小学校のころから空手をやってたみたいなんだよね。午前中は打撃技をやってたんだけど、すごかったよ。あの長い脚で家畜たちをめった打ち。変幻自在に軌道が変わってね? 足とか胴体とか頭とか防御もできずにボコボコにされてたなあ。ほら、こいつの体もアザだらけでしょ? これも全部、麗美ちゃんがやったんだ」
純菜が顔面騎乗をしている藤山先輩を見下ろして言う。
彼女の言うとおり、藤山先輩の体は所々赤黒く変色していて、凄惨な暴行が繰り返されたことが分かった。男をここまで一方的にボコボコにしてしまった麗美に、俺は恐怖を感じた。
「でも、さすがにやりすぎかな。麗美ちゃんがあれ以上やったら、今後の練習であいつ使えなくなるかもしれないから、ちょっと止めてくるね」
そう言って純菜が麗美を止めに行った。
後に残されたのは男二人だった。隣の藤山先輩のほうを向くと、そこにはしっかりと墜とされた男がいた。息継ぎを許されず、酸欠で気絶しているのだ。純菜の巨尻でもって意識を刈り取られてしまった男。苦悶の表情を浮かべて、涙と涎でぐちゃぐちゃになったその顔はどこまでも負け犬で、家畜だった。
「ゆ、ゆるひてくだひゃい。もう絞めないで」
「助けてえええッ! ひゃだあああッ。もう気絶したくないいいッ」
男たちの悲鳴が競技場にこだまする。
そんな命乞いは残酷な少女たちにとって興奮のスパイスでしかなく、男たちはさらなる締め付けで何度も意識を失っていった。その地獄絵図は、けっきょく、夕方に練習が終わるまで続いた。
つづく