どうしてこうなったのだろう。
僕は、美空さんの太股の中に拘束されながら絶望を感じた。
「ほらほら、はやく脱出しないと墜ちちゃうよー」
おどけたような口調だった。
丸太のように逞しい太ももが、僕の頭を覆い隠し、圧迫していく。
女の子らしい柔らかい筋肉を感じることができるのだが、そのビクともしない威圧感には畏怖の念しかおこらない。
ぎぎぎ、と頭蓋骨が軋んでいく。彼女はその音を楽しむように、さらに太ももに力をこめるのだった。
「ふふ、これで半分くらいの力かな」
ぎゅううううッ!
「ぎゃあああああ!!」
「アハッ、すごい悲鳴! じゃあ、次は6割だよー」
メキメキメキッ!!
僕は彼女の太ももに捕食され、脱出不可能な肉の監獄に閉じこめられてしまう。
下級生の・・・・・・この前入学したばかりの女の子に、手も足もでずに圧倒されてしまう僕。
どうしてこうなったのだろう。僕は、地獄の始まりを思い出していった。
僕はボクシング部の部長をしていた。
けっこう有名なボクシング部だった。
過去にはオリンピック選手を排出したこともある。
そんな由緒ただしい部の部長になるにはそれなりに努力が必要だった。
とくに、体格に恵まれていない僕はいっしょうけんめい頑張ってボクシングに励んできた。
そのかいあって、この前の大会ではかなりの上位に食い込むことができた。ほかの部員たちもそれなりの成果をおさめ、かつてない充実感のもとで僕らは練習にはげんでいた。
それなのに、
「練習場をかけて、試合をしてくれ?」
僕は思わず大きな声をあげてしまった。
それほどまでに、目の前の女の子の申し出はあっけにとられるものだったのだ。
「うん、そうだよ♪」
元気いっぱいに女の子は答えた。
さきほど、「1年生の河野美空だよ」と自己紹介をしてくれた女の子(下級生)は、自信満々に言ってのけた。
彼女はセミロングの茶髪で、とても可愛らしい顔立ちをしていた。
しかし、その体格は押して知るものがある。
体格にめぐまれていない僕よりも身長が高く、肩幅も広い。こうして目の前にたたれていると、大きな壁を目の前しているような気がする。
僕はその女の子から、威圧感のようなものを感じていた。
「ここの練習場をかけて、勝負してほしいの。それで、わたしたちが勝ったら、ここを明け渡してほしいんだ。総合格闘部の練習場が手狭になってきたから、わたしたちの練習場にしたいんだよね」
美空は自信満々そうだった。
1年生・・・・・・ついこの間、入学してきたばかりの女の子に舐められているようで、僕も腹がたっていた。
ほかの部員たちも同じようで、勝負にのり気の様子だった。ここは一つ、この生意気な下級生にお灸をすえてやろう。僕はこの勝負を受けることにした。
「わあ、ありがとう!」
「いいよ。で、勝負っていうのは総合のルールでやるのかい?」
「え、違うよ。それじゃあ勝負にならないじゃない。普通のボクシングの勝負でいいよ。わたしたちのうちの一人にでも勝てたら、そっちの勝ちでいいからさ」
「なんだって?」
「いいからいいから。ハンデをあげないと勝負にならないもん。それに、この条件で負けたら、さすがに恥ずかしすぎて練習場を渡してくれるでしょ?」
かちんときた僕らを無視するように、美空
は手招きをして誰かを呼ぶようだった。
「ねえ、みんなー、この人たち勝負してくれるってよ」
美空さんの呼び声を受けて、入り口から歩いてきたのは、みんな体格のいい女の子たちだった。
総勢3人の鍛え上げれた少女たちが横一列に並んだ。
「わたしたち、女子総合格闘部の1年生なの。この前、入部したばかりで今日がはじめての実践なんだ。よろしくね」
僕らはあいた口がふさがらなかった。
この子はどこまで僕らをなめれば気がすむんだろう。ボクシング部の男たちは激怒し、最初から全力で叩きのめしてやろうと決意した。
しかし、
「どうしたんですか、先輩。はやく立ってください」
第一試合。
そこでは、予想もつかない出来事がおこった。
相手の女子格闘部の1年生は、クールな感じの黒髪美人だった。
書道や剣道が似合いそうな大和撫子だ。彼女は試合開始直後、いきなりラッシュを繰り出した。
空気を切りさくジャブがボコボコボコっと男のガードの上にたたき込まれる。
たちまち体勢をくずした男にむかって、必殺の右ストレートが炸裂した。
メッシイイ!!
直撃だった。
男の顔面がおもしろいように歪んで、そのまま地面に倒れてしまう。
ここまでわずか5秒。
男はリングに沈んでぴくぴく痙攣し、それを女子生徒が悠然と見下ろしている。
「まさか、これで終わりなんですか?」
女子生徒はこつこつという足音ともに、うつぶせの格好で倒れたままの男に近づくと、その顔面を足で踏んだ。
ぐりぐりと蹂躙し、その顔がよく見えるようにする。
男の口からはマウスピースがはずれ、その口からはブクブクと蟹のように泡がでていた。
涙と鼻水でぐしょぐしょで、白目までむいている。
それを大和撫子の女子は冷ややかに見下ろした。彼女は男の顔面を踏みしめながら、端的に言った。
「気絶してます。わたしの勝ちですね」
「う、嘘だろ?」
僕は呆然と言った。
倒れた彼は、ボクシング部の期待のホープだった。
次の代では確実に皆をひっぱっていける実力をもっていた。努力家で、毎日練習にはげんでいたのを覚えている。
そんな彼が、この前入学してきたばかりの女の子に・・・・・しかも、5秒で秒殺されてしまうなんて・・・・・・。
「次は誰ですか?」
リング上の少女が言った。
その冷ややかな瞳に、ボクシング部の男たちは威圧されるようだった。
彼女の強さは本物だった。おそらく、ほとんどの部員が彼女には勝てないだろう。
「僕がいく」
部長としての責任をはたすために、僕はリングにあがった。
大和撫子の黒髪美人は、僕を冷ややかに見下ろすだけだった。
「あ、桔梗ちゃん。順番だよ順番」
そこで、美空がリングに入ってきた。
彼女は遠足前の小学生のような浮かれ具合だった。
彼女は気絶した男にも、リングにあがった僕にも注意をはらわず、黒髪美人の桔梗に話しかける。
「桔梗ちゃんばっかり独占してちゃズルイよ」
「しかし、相手の方が弱すぎたのです。これでは練習になりません」
「ダメだよ。打撃練習したいのは桔梗ちゃんだけじゃないんだからね。ね、優花ちゃんも練習したいよね」
そこで、美空はリング外にいるもう3人目の女の子に声をかけた。
優花と呼ばれた彼女は、どこかオドオドと視線を泳がせていた。
体格は美空や桔梗と同じくよいのだが、どうにも気弱そうで、格闘技をやっているようには見えない。
「あ、あの、わたしは、あとで、いいです」
細々とした小さな声で優花は言った。
「もう、そんなことじゃダメだよ」
「あ、あ。わたし、ボクシング部の人が逃げ出さないようにしておくので・・・・・・美空さんと桔梗さんで、どうぞよろしくお願いします」
言い終わると、優花は出口の前まで走っていってしまった。
彼女はそこで、所在なさげに立っている。ボクシング部ただ一つの出入り口を、彼女は固めているのだ。
「さっきから、なにを言ってるんだ?」
僕は美空さんにくってかかった。
いくらなんでも、彼女たちは僕らのことをなめすぎだ。
真剣勝負をするような様子ではまるでない。僕らに勝つことはすでに決まっているような態度に、ボクシング部一同は怒っていた。
「え、あ、ごめんごめん」
美空さんは、そこではじめて僕に気づいたようで、満面の笑みであやまった。そして、
「ほら、桔梗ちゃん。とにかく次はわたしがやるから。桔梗ちゃんはその次だよ」
「仕方ありませんね」
しぶしぶながら桔梗がリングから降りる。
残されたのは、美空と僕だった。
リングの上にたった美空は自信満々だった。
大きな体をどっしりかまえている。これから試合が始まるというのに、真剣勝負をしようという緊張感がまったくなかった。友達と遊ぶかのような気楽な感じさえある。
「センパイにはハンデをあげますね」
美空が楽しそうに言った。
「なんだって?」
「ハンデだよハンデ。勝負をおもしろくしないとね」
彼女は、そうだなーと可愛らしくつぶやくと、
「3分間、わたしからは攻撃しないであげます。その間、センパイは自由にわたしに攻撃してOK。3分経過後に、はじめてわたしが攻撃していくってことで、どうですか」
言葉もなかった。
彼女は僕のことをなめきっている。こんな入学したての下級生に、男の僕がここまで舐められるなんて・・・・・。僕は、すうっと血液が凝固をするのを感じた。最初から全力でいく。僕は黙ってファイティングポーズをとった。
「決まりだね。じゃあ、さっそくやろっか」
美空もまた構えをとる。
ゴングがなった。
*
最初から全力。
僕は、足をつかって彼女のまわりを走りまわった。
このスピードが僕の持ち味だった。相手はこれについてこれず、手数で圧倒することによって非力さをカバーする。
男子のボクシング部でもこのスピードについてこれる者はそういなかった。
(なのに、どうして・・・・・)
美空は僕のフットワークを見ても楽しそうに笑ったままだった。
頭にきた僕は、最初のジャブを彼女に放った。
しかし、
「あは、おそっ」
頭をひょいっと傾けただけで、彼女はあっさりと僕の攻撃をかわした。
まったく無駄のない動きだった。
僕の攻撃をすっかり見抜いていなければ、こんな避け方はできない。
「ほら、センパイ。はやく本気だしてくださいよ。そんなノロノロした動きじゃ、一発もあてられませんよ?」
かわいらしい顔で、辛辣な言葉を吐く美空さん。
僕は焦りながらも、次々と拳を繰り出していく。
しかし、
「おそっ」
そのすべてを美空さんは軽々と避けていった。
まったく相手になっていない。
こちらの全力をフットワークもろくにつかわず、反射神経と運動能力だけで回避している。
目の前の女の子が、だんだんと化け物に思えてきた。
「センパイ、ひょっとして、今のが全力なんですか?」
ラッシュが途切れた合間をみて、美空さんが言った。
「こんな遅いパンチ、はじめて見たよ。フットワークだってノロノロしてるし・・・・・・想像以上に、センパイたちはザコなんですね♪」
「なめやがって!」
怒りに身を任せた僕は、美空さんに殴りかかった。
手加減なんてみじんもしない。全力の拳。
しかし、美空さんはそれを笑いながらすべて避けてしまった。
息があがって汗をしたたり落としている僕と、まったくの余裕で、汗一つかいていない美空さん。
もうすでに、勝負はついたも同然だった。
「はい、3分経過~」
美空さんが楽しそうに言った。
「じゃあ、これから攻撃しますね♪ 大丈夫。ケガしないように、ちゃんと手加減してあげますから」
ボコオオオッッ!!
まったく見えなかった。
気づいたときには、腹の感触がなくなっていて、地面に四つん這いになるように崩れおちていた。
ボディーへの一撃。
丸太が直撃したみたいな一撃が、僕の腹に炸裂した。
「はい、ダウン!」
嬉しそうに美空さんが言う。
僕は足をガクガクさせながら、必死に立ち上がった。
ファイティングポーズをとろうとして、足が笑った。嘘だろ。たった一撃のボディーで、ここまでダメージを負うなんて!
「ふふっ、センパイ、足がふるえてますよ。そんなにわたしのことが怖いの?」
「ち、違う」
「そうですよねー。今まで一生懸命練習してきたボクシングですもんね。まさか、この前入学してきたばかりの女の子に、しかも、ボクシングなんてやったこともない女の子のパンチが怖いなんてこと、ありえませんもんね」
美空さんが笑いながら言った。
なめられている。
この前入学してきたばかりの新入生に、女の子になめられている。
でも、どうしようもなかった。ヒザに力が入らない。美空さんが笑いながら、ガードなんて何もせず、ブラブラ手を下にしてこちらにくる。
僕は一歩、後ろに逃げてしまった。
美空さんはそれを見逃さなかった。
「さあ、ショータイムだよ!」
ボコッ。ボコボコッッ。
ベシイイイッッ!!
ラッシュ。
さきほどの結衣さんのが針のような一撃だとしたら、美空さんのは重いブルトーザーのような拳だった。
それが何度も何度も僕の体に叩きつけられる。
顔はパンパンに腫れ、体中が赤くそまっていく。
そんな今まで受けたこともない拳を繰り出してくるのは、年端もいかない少女なのだ。
彼女は笑いながら僕を破壊していった。乱暴に犯すように、僕の体に拳をたたき込み続ける。
ダウンは許されなかった。
背中はロープ。
後ろに倒れ込みそうになれば、ロープで体がはねかえり、カウンターじみた一撃で体を破壊される。
連続したパンチで前のめりに倒れ込むことさえ許されない。
僕は、新入生の女子生徒にボコボコにされていった。
「はい、仕上げ!!」
ベッギイイイイ!!
アゴに強烈な一撃を受け、そのまま僕はリングに崩れ落ちた。
やっと解放された。負けた悔しさよりも、恐怖の時間から解放されたことに対する安堵のほうがまさっていた。
「ふふ、弱いね、センパイ」
薄れいく意識の中で、美空さんの声が天高くから聞こえてきた。
「でも、あれだけ殴られても意識を失わなかったんだね。打撃に関しては「合格」だよ」
それだけが耳に届いてきて、僕は意識を失った。
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・
唐突に、僕の意識はめざめた。
眠りから覚めた直後のように、僕はぼんやりとして何も考えられなかった。視界がかすれていて、変に気持ち悪かった。
そんな僕を現実に戻したのは、そこら中から聞こえてくる男たちの悲鳴だった。
「ひいいいいい!!」
「あ・・・・ぎゃ・・・・や、め・・・」
「許してください、もう、許して!!」
ボクシングの練習場は地獄に化していた。
美しい三人の女の子たちが、ボクシング部の男たちを血祭りにあげていた。
彼らの体は皆、真っ赤だった。
ひたすら殴られたことが分かる。
きっと、手も足もでないまま殴られ続けたのだろう。
今の彼らには抵抗しようという気配さえ見られなかった。
美空さん、桔梗さん、優花さん。
彼女たちは今、殴られ、体を真っ赤にした男たちを、関節技などで虐めていた。
打撃は終わり、次は彼女たちが所属している総合格闘技部の時間だった。
ボクシングで勝てなかった男たちが、関節技で勝てるわけがない。
3年生も2年生も、当然に1年生も、この前入学してきたばかりの少女たちに、首を絞められ、背骨をきめられ、足の間接を伸ばされていく。
「が、がんばってください。も、もう少しで合格、です」
一番近くでは、優花さんがアルゼンチンバックブリーカーをしている。
彼女は、ほかの三人と違って気弱そうに見えた。口調もおどおどしているし、とても強そうには見えない。
しかし、身長はそこら辺の男と比べて見劣りしないし、体格だって負けていない。
その強さを体現するように、優花さんは、軽々と男の体を肩でかつぎ、男の背骨を軋ませ続けていた。
「アぁああ・・・がああ!!」
優花さんの肩にかつがれている男が情けなく身もだえる。
県でベスト16に入った3年生は、抵抗らしい抵抗もできないまま、優花さんの肩の上で悲鳴をあげ続けることしかできない。
「こ、これが最後です。いきますよ」
言うと、優花さんは、ぐいっと胸をはった。
結果、それまでとは比べものにならないほど、男の背骨が反る。
そのまま、彼女は、ゆさゆさと男をゆさぶり始めた。
男が女を犯すような、荒々しい上下運動。優花さんは残酷な作業を弱々しい表情のままやってのけた。
「ひぎゃ、あ!! ・・・・やみゃ、あがはああああ・・・・あははああん・・・あ」
ゆさゆさ揺らされ、しだいに息が続かなくなっていく男。
そんな上級生の男の悲鳴には無頓着に、優花さんはさらに胸をはった。
インナースーツからは意外なほど豊かに育った胸が突き出ていた。
童顔な彼女に似合わず、優花さんは3人の中で一番、胸が大きいようだった。
「ひ・・ああ・・・・・・・・・はああ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
男の悲鳴がやみ、微弱だった抵抗もまったくなくなった。
優花さんはそれでもアルゼンチンバックブリーカーをとかない。一生懸命に、けなげなほど純粋に、男の背骨を軋ませ続けている。
「優花、その男、もう墜ちていますわよ」
隣でチョークスリーパーをかけている大和撫子、桔梗さんが声をかけた。
その言葉に、「え?」と疑問形になった優花さんが肩の上の男の様子をさぐる。
彼女は慌てたように男を解放してやった。
「ご、ごめんなさい! わたし、気づかなくて・・・・・・」
今にも泣きそうな優花さんだった。
彼女は、地面に倒れた男を涙目で見下ろしていた。
気絶した男は白目になっていた。口からは舌が飛び出て、ぶくぶくと泡までふいている。完全に気絶していた。
「あ、その、残念ですが不合格です」
申し訳なさそうに優花さんが言った。
本当に彼女は気弱そうだった。
けれど、実力は折り紙つきだ。
こんな虫も殺せないような女の子が、3年生の実力者を、全身が真っ赤になるほど殴りつけ、そしてアルゼンチンバックブリーカーで気絶させてしまったのだ。
「あの、失礼しますね」
そういうと、優花さんはひょいっと気絶した男を抱き起こした。
大きな胸が男にあたって変形している。
彼女はそのまま、軽々と男をかづぐと、そのままリングの外へと運んだ。
練習場のかたすみ、そこには、うず高く積み上げられた男たちの体があった。
すでに殴られ、気絶した男たちの死体置き場だ。
戦利品をつみあげるがごとく、ボコボコにした男たちは一カ所に積み上げられていた。
「うーん、やっぱり合格者はなかなかいないねえ」
リング上の美空さんが言う。
余裕の表情だが、彼女もまた、男にキャメルクラッチをしかけている最中だった。
エビぞりになり、男が満足な悲鳴もあげられないほどの苦痛を、美空さんは余裕そうに与えていた。
「こちらも不合格です」
長身をいかしたチョークスリーパーで男の首を背後から絞めていた桔梗さんが、吐き捨てるように言った。
どさっとリングに倒れた男はビクビクと気持ち悪く痙攣している。
「あ、こっちも墜ちた」
美空さんが淡々と言った。
美空さんは、しらけた様子で、涎で醜く汚れた男の顔を見下ろしていた。
「これで、全員不合格ですか」
桔梗さんが冷たく言った。それに対して、美空さんが、
「いや、まだ部長さんの試験をしてないよ」
「ああ、打撃試験には受かりましたよね」
「あ、お、起きたみたい、です」
優花さんの言葉に反応して、3人が僕のほうへと注目した。
ボクシング部の男たちをボロ雑巾のようになるまでボコボコにした3人の女の子。
彼女たちに見つめられるだけで、僕の体は震え、ひいっと悲鳴がもれた。
「あはっ、起きたんだね」
美空さんがう嬉しそうに言った。
3人は僕のほうまで来ると、ぐるりとその周りを囲んだ。
僕はまだ意識が朦朧としていて、リングに横たわったままである。
彼女たちはそんな僕のまわり立ったまま囲み、仁王立ちで僕のことを見下ろしていた。
まるで大きな壁にまわりを囲まれてしまったかのような迫力。
ふと視線をあげてみれば、そこには鍛えぬかれた太ももがある。
この妖艶な脚で、いったい何人の男が気絶させられてきたのだろうか。そう考えるだけで、僕の背筋は凍った。
「誰がやろっか?」
美空さんが無邪気に言った。
「わたしはもういいです。どうせ、この男も大したことがないのだろうし」
桔梗さんが絶対零度の視線で僕のことを見下ろしながら言った。
桔梗さんは、ちらっと隣の優花さんを見てから、
「優花、やりませんか?」
「え、え? わ、わたしですか?」
「そうです。わたしと美空は十分楽しみましたから。あなたはまだ、6人しか墜としていないでしょう」
「それがいいよ、優花ちゃん」
美空さんも桔梗さんの意見に賛成らしかった。
優花さんは困ったような表情を浮かべた。
ちらちらと倒れた僕のほうへと視線をむけてくる。
彼女は意を決したように顔をあげると言った。
「わ、分かりました。わたし、やってみます!」
*
僕はまだ地面に横たわっている。
体に力が入らないのだ。だから、僕は優花さんから逃れることなんてできるわけがなかった。
「し、失礼します」
どもりながら言うと、優花さんは僕の片手をとって、軽々と僕のことを立たせた。
体に力が入っていないので、なかば手を支点に宙づりになる格好だ。
全体重がかかっているというのに、優花さんはまったくの余裕の表情で、僕のことを片手で持ち上げている。
「これから、試験を行い、ます」
優花さんが優しげな声で言う。
「耐久力と肺活量の試験です」
「な、なにを言って、」
「がんばってくださいね」
僕の疑問に答えることなく、優花さんは天国を完成させた。
彼女は、僕のことを正面から抱きしめた。
むにゅっと、信じられないくらいに柔らいものが僕の胸板で潰れている。
その大きさに僕は目を白黒させてしまう。
僕の胸板で潰れた胸は圧巻なほど巨大で、まるで僕の胸が優花さんに侵略されているような感じさえした。
目の前には優花さんの可愛らしい顔。
甘い吐息が鼓膜をくすぐり、いい匂いが鼻孔を刺激して、僕の頭はぼんやりと麻痺する。
しかし、そんな天国はあっという間に地獄にかわった。
「ベアハッグ、いきます!」
ミッシイイイイイ!!
「ひっぎゃあああ!!」
突如、僕の体を万力が締め付けた。
ぎりぎりと、自分の体が軋んでいるのが分かる。
ミシミシと潰れていく。
こんな怪力、今まで味わったことなどない。可愛らしい女の子に、体を潰されていく・・・・・。
「ひっぎ!! やみゃひゃあああ!!」
「す、すごい悲鳴です。が、がんばってください」
すさまじい力で僕の体を抱きしめているというのに、優花さんは息を荒げていなかった。
まったくの余裕で、談笑するかのように彼女は言葉を続けた。
「ほ、ほかの部員さんたちは、みんな1分ももたずに気絶してしまいました。先輩はどうですか?」
ミッシイイイイ!!
ベギ!! バギイイ!!
「あっひゃガガああああ!!」
だんだんと力がこもってくる。
僕の体は宙に浮き、優花さんの体に埋もれるような格好だ。
彼女の柔らかい肉。とくにその大きく突き出した巨乳は、僕の胸板で妖艶に潰れ、凶器になっている。
彼女の巨乳が僕の胸板を征服している。大きなおっぱいに潰されているような、そんな感じさえしてきた。
「揺らしますね?」
優花さんが優しく、しかし無慈悲に言った。
やめ・・・・そんな制止の言葉さえ封じこめるように、彼女は荒々しく体を揺らし始めた。
ゆっさ、ユッサ、ユッサ。
ブルウン、ユッサ、ぶん、ぶん。
ゆっさ、ゆっさ、、ブルウウン!!
「アギャ! ・・・・ひいい・・・・ふあああんんんッ!! ・・・・やみゃ・・・・やめ、かあ・・・・・・ひいいい・・・・」
万力はそのまま。
彼女は僕を潰しながら、ゆさゆさと僕の体を揺らす。柔らかいはずの彼女の胸が僕の体に擦りつけられる。
その感触を楽しむことなんてできなかった。僕の肺から強制的に空気が漏らされていくのが分かる。
優花さんが僕を揺するたび、貴重な空気が肺から漏れていく。彼女のおっぱいが僕の肺を刺激して、苦しくなって息が漏れる。
なんとか空気を求めて息を吸おうとする。しかし、そのたびに、
ミイッシイイイイ!!
ベギバギ!!
ベッギイイイ!!
「あっひゃがあ・・・・ッギギ!!」
「どうですか? 息、吸えませんよね?」
優花さんが腕の力を増し、僕の呼吸を許さない。
息苦しさと、体が潰されていく激痛。二重の苦しみに、僕の意識はしだいに薄れていった。
「あ、目がトロンとしてきちゃいました」
優花さんが万力を継続したままで言った。
「黒目がちょっと裏がえって、口からは涎があふれてますね。も、もう限界なんですか?」
「ひっぎ・・・・・ひゃあ・・・・・あが」
「もっと揺らしますね?」
ブッルウウン!
ゆっさゆっさ!!
ぶん、ぶん!!
「ひひゃは・・・・ああ・・・」
「もう、限界みたいですね」
目の前の優花さんの顔が残念そうに陰をもった。
「まだ30秒しかたってないのに。先輩も気絶しちゃうんですね」
「ひぎ・・・っやあ・・・やみゃて・・・・・」
「わたし、高校に入ってから格闘技を始めたんです。まだ3週間しか練習していません。それなのに、なんで男の人はわたしに勝てな
いんでしょうか」
彼女は侮辱を言っているというより、心底疑問に思っているといった様子で続けた。
「わたし、もっともっと強くなりたいんです。そのためには、練習相手が必要なんです。でも、この様子じゃ、先輩は練習相手にすらなれませんよね」
瞬間、それまでとは一線を画する力が僕の体に加えられた。目がチカチカした。
ベッギイイイイイイイイイイイイ!!
「あぎゃばばべb!!」
「ほら、ぜんぜん抵抗できませんもんね」
優花さんが残念そうに言った。
「情けないですね。先輩」
優しそうな清純な女子に、心底同情されている。
まだ格闘技をはじめて3週間の女子に、バカにされている。
物心ついたときから、ボクシングに打ち込んできた僕が。初心者の女の子にここまでバカにされて、黙っていられるわけがなかった。
「な、なあめるなああ!!」
僕はのどをからすように絶叫した。
体に力を入れて、ベアハッグに対抗する。
優花さんの腕の締め付けを腕で食い止め、大きな胸の感触を少しでも少なくしようとする。
必死の形相。
汗が飛び散り、くいしばった歯茎がぎりぎりと痛む。
渾身の力をふりしぼって、僕は優花さんの抱きしめから逃れようとした。
少しだけ、息苦しさが軽減され、僕は念願だった息を吸った。
「あ、すごい」
優花さんが驚いたように言った。
彼女は、僕の必死の形相を真正面から観察している。
その余裕そうな表情。
ここまで抵抗されているのに、彼女はまった余裕で、力を入れているようにすら見えなかった。
可愛らしい、新入生らしい童顔。
彼女は、僕を抱きしめながら言った。
「す、すごいです、先輩。まだ、こんな力が残っていたんですね」
「ふっぐうううあああ!!」
「が、がんばってください! もう少しですよ。あ、あと10秒です!」
ギリギリギリ!!
油断すると、優花さんの腕がプレス機のように僕の体を潰しにかかる。
だから一瞬の気も抜けなかった。僕は全力で力を振り絞り、なんとか優花さんの締め付けを軽減していた。
しかし、それだけだ。
この抱きしめから逃れるなんて想像すらできなかった。
それほどまでに、優花さんのベアハッグは完璧で、すさまじい怪力だった。
「5、4、3」
期待に満ちた声で、優花さんがカウントダウンする。
「2、1、0!! やりました、先輩! 合格ですよ!」
瞬間、優花さんの腕から力がなくなった。
抱きしめは継続中で、僕はまだ優花さんと密着して彼女の腕の中にいる。
しかし、それは単なる抱擁だった。
恋人同士がするよな熱い抱きつき。
さきほどまで凶器だった大きな胸が、今では僕の胸板でぐんにゃりと潰れた柔らかいものにかわっている。
僕の体は力が入らなかった。
すべての力を出し切ったのだ。
ぐったりと力を失った僕は、自分で立つこともできない感じだった。
まるでレイプされた女の子のように、目が虚ろになり、全身の力が抜けて操り人形のようになってしまった僕の体。
優花さんに抱きしめられることによってようやく立っていられる。
僕の体は彼女の体に埋もれるようになっていた。
2歳も年下の後輩の・・・・新入生の女子に全体重を預け、朦朧とした意識でわずかな勝利感を感じている僕。
その勝利感が間違いであることを、僕はすぐに知ることになる。
「にゃはは、これでようやく合格一人だね」
美空さんが嬉しそうに言った。
「とりあえず、練習台が決まってなによりですわ」
冷たい声色で、桔梗さんが言った。
桔梗さんは、優花さんに抱きしめられたままの僕の髪を掴むと、ぐいっとひっぱり僕の顔を見えるようにした。
冷酷な視線で見下ろされた僕は、生きた心地がしなかった。
「あの、美空さん、桔梗さん」
そんな二人に対して、優花さんが意を決したように口を開いた。
「先輩にチャンスをあげてはどうでしょう」
「チャンス?」
「そ、そうです。先輩はすぐ気絶しちゃう情けない男の子じゃありません。きっと、今までいっぱい練習してきたんだと思います」
優しげな視線が僕にそそがれる。
緊張しているのか彼女は体を震わせていて、その振動で爆乳がぷにゅりと僕の体で擦れた。
柔らかい彼女の肉に、僕の体も反応してしまう。
「だから、チャンスをあげたいんです。今度は本気のベアハッグで、30秒間気絶しなかったら、ボクシング部は見逃してあげませんか?」
僕の体に衝撃が走った。
そんな僕などおかまいなしに、3人は話を続けている。
美空さんと桔梗さんは意外にもすぐに優花さんに賛同した。
優花さんは嬉しそうに笑った。
抱きしめて拘束している僕にむかって、本当に嬉しそうに言った。
「聞きましたか、先輩。わたしの本気のベアハッグに30秒耐えられたら、ボクシング部は見逃してあげます♪」
「ほ、本気の・・・・ベアハッグ?」
「そうです。これから、わたしが全力で抱きしめますからね。さっきみたいに、すっごく手加減することはありません。だから、がんばってくださいね」
「さ、さっきのは、本気じゃなかったのか?」
「え、あ、はい。4割? いえ、3割くらいの力でしょうか。まだまだ格闘技を始めたばかりで、手加減とか難しいんですけどね」
天使のような純粋な表情で、彼女は恐ろしい言葉を放った。
僕は彼女の柔らかい肉の中で拘束されている。そのすばらしい感触が恐怖にかわった。
彼女は3割の力しかだしていないという。しかし、僕の感じたのは全くの地獄だった。
いつ体が潰されるか分からないほどの怪力。
必死に抵抗しても、最後まで逃れられなかったベアハッグ。
それが、本気の力ではないなど、僕にはとうてい、
「それじゃあ、がんばりましょうね、先輩」
ベッギイイイイイイイイイイッッ!!
ミシミシバギイッッッ!!
ベギバギバッギイイベギギギッッ!!
「~~~~~~~!!!!????」
悲鳴さえあがらなかった。
内蔵が飛び、で・・・る。
口から全部・・・・出ちゃ、う。
骨が、軋んで、
息が、苦し
やみゃて、
あ、あ、あ、あ
「揺らしますね」
ベッギイイイイ!! ぶるうん!!
バッギベギバキャぎぎベッギイ!!
ゆっさゆっさ、バッギッギ!!
ミシミシバギバギベギ!!
「ひゃあ!!、やみゃ、ひゃあああ!! むり、へすうう!! っひいい・・あべばああbあdd・・・っふいいきい!!」
ミッシイイイイ!!
バギゲババギギギギ!!
ミシイイ!! ぶるん、ゆっさゆっさ!!
「ふふ、す、すごい音ですね、先輩」
一生懸命、僕の体を潰す後輩。
優花さんは慈愛の眼で僕を見つめていた。
「目がトロンとしてきましたね。黒目も裏返っちゃって、口からは涎もでてきました。でも、先輩なら耐えられると思います。が、がんばってください!」
ベッギイバギベギ!! ゆっさ!!
メシバギギギギッッギ!!
ミシイイイイイイッ!! バギバギッ!
ギギベッギイイイイっっ!!
「・・・やみゃ、ひゃあああ・・・・ひっぎ、あbgアア・・ふrこさこああ・・・・ひいいびふう」
ベギバギイイイ!!
みじみしベッギイ!!
ぎしぎしいいいい!!
「あ・・ごsmpdms、お、g!!」
意識が遠のいていく。
極上の巨乳で胸板を潰され、肉を潰され、骨を潰され、内蔵を潰され、僕という存在が優花のすべてに屈服する。
優花の優しげな笑みを見ながら、僕は意識を手放した。
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・
顔の痛みで目がさめた。
意識が朦朧としている。
視界にボクシング場が見えてくる。
ああ、そうだ。僕はボクシングの練習をしていたんだ。
気絶していたのだろうか。ひどく体中が痛み、気持ちが悪かった。
バッシイイイッ!!
「ひいいい!!」
突如、顔に鋭い平手打ちを受けた。
意識が戻った。
地獄に戻った。
僕は、大和撫子の桔梗さんに胸ぐらを掴まれて宙づりにされ、往復ビンタを受けている最中だった。
「起きましたわ」
目の前の桔梗さんが言う。
彼女は絶対零度の視線で、僕のことを観察していた。
顔中がジンジンする。麻痺して感覚がないくらいだ。
いったい、僕はどれくらいの時間、桔梗さんに往復ビンタされていたのだろうか。
きっと、僕の顔はパンパンに腫れて、真っ赤に充血していることだろう。
「二度目の失神は気持ちよかったのかしら」
侮蔑するように桔梗さんが言って、そのまま僕の胸ぐらをはなした。
体中から力が抜け、自分で立つことなんてできない。
僕はどさっとリングの上に仰向けで横たわってしまった。
すぐに、三人の少女たちが僕の周りをとり囲んだ。
大きな、たくましい、少女たち。その柔らかい壁が周囲を取り囲むと、それだけで僕は恐怖を感じた。
後輩に・・・・新入生の女の子に、じっと見下ろされている。
ボコボコにされて、二度も失神させられてた男をバカにするように、彼女たちは仁王立ちで、横たわった僕のことをじっと見下ろしていた。
「ふふ、結果発表~」
美空さんが楽しそうに言った。
「センパイは、優花ちゃんの本気ベアハッグに7秒で気絶させられちゃいましたー。あは、10秒も保たなかったんだよ。よわすぎだよねー。優花ちゃんもそう思うでしょ?」
話しを振られた優花さんは、困ったような表情をしていた。
彼女は僕のことを見下ろしながら、やっと口にした。
「は、はい。まさか、こんなに早く気絶しちゃうなんて・・・・・ちょっと期待はずれ・・・・でしたけど、でも、先輩はがんばったと思います。一生懸命、抵抗していましたから」
「にゃはは、優花ちゃんは優しいねー」
美空さんが言葉を続けた。
「でも、これでセンパイの未来は決定したね。センパイは、これから練習台になるんだよ。人間サンドバックとして、女子格闘技部の備品になるの」
うれしいでしょ? と美空さんが言う。
僕は自分でも気づかないうちに涙を流していた。
こんなにもバカにされて、新入生の女の子に同情までされて、今までの自分の人生はなんだったのかと絶望にかられた。
「ふふっ、泣いちゃった。なさけなーい。それでも年上なの? 後輩の女子にボコボコにされて、手も足もでないで、ズタボロにされちゃった気分はどう?」
美空さんが嗜虐的な表情で言う。
頭上から見下ろしてくる彼女の顔は、妖し
く輝いていた。
「いつでも、リベンジしていいんだからね。センパイが私たちの誰かに勝てたら、そのときは解放してあげるよ」
美空さんは、ふふっと笑って、
「なんなら、今でもいいんだよ? リベンジしてみる? わたしたちともう一回、戦ってみよっか」
美空さんは言うと、一歩僕のほうへと体を寄せた。
それに続くように桔梗さんが続き、おずおずと優花さんがそれに続いた。
肉の壁が間近にあった。
年相応に発育した女の子らしい肢体。
しかし、彼女たちは僕の何倍も強いのだ。
きっと、彼女たちと戦えば、さきほどと同じ結果にしかならないだろう。
新入生の後輩に、手も足もでずにボコボコにされ、最後には気絶させられる。
関節技で体を壊され、ボロ雑巾のようにリングの上に転がる。
美しい少女たちにメチャクチャにされる未来。それしか僕は想像ができなかった。
「おびえていますね。情けない」
桔梗さんが言った。
「先輩・・・・・・」
優花さんが哀れむような視線で僕のことを見下ろしていた。
「ふふっ、それじゃあ、これからよろしくね。人間サンドバックくん」
しめくくりの言葉を言った美空さんが、ゆっくりと片足をあげた。
そのムチムチした脚を見せつけるかのように高くあげると、そのまま僕の顔にむかって振りおろした。
顔を踏みつけられる。
ぐりぐりと、彼女の足裏が僕の顔面を蹂躙していく。
僕は涙を流すことしかできなかった。
新入生の女子に顔を踏まれている。
それなのに、僕は彼女たちのことが心底怖くて、反抗できないでいた。
少女たちの笑い声が、リングに響いた。