それから、僕は真由美ちゃんに命じられて、毎日欠かさずジムに通うようになった。

 それまでは、ほかのジム会員と一緒にトレーニングをすることは禁じられていた。

 男性ブースという、すごく狭いところで一人黙々と(隣にインストラクター役の真由美ちゃんがいたけれど)、筋肉トレーニングに励んでいたのだ。

 しかし、今回、ほかの女の子たちがいるところでトレーニングをすることが許された。

 広々とした空間。

 多種多様なトレーニングマシンの数々。

 そんな高級ジムさながらの環境で、僕はトレーニングを始めることになったのだった。


(しかし、他の女の子たちもすごいな)


 ジムには若い女の子たちがたくさんいた。

 こういうジムは、普通だったら、ひまを持て余した老人たちが闊歩するのが普通なのだが、このジムには若い女性しかいなかった。

 しかも、そのほとんどが学生の女の子たちらしかった。

 大学生や高等部の年齢層が多く、ついで中等部、さらには一人二人といったほどだったけれど、初等部高学年の女の子までが在籍していた。

 年齢層の低さに最初は戸惑っていたものだったが、今ではまったく驚かなくなっていた。

 それもそうだろう。

 彼女たちの実力を知ってしまうと、そんなことはどうでもよくなってしまっていた。

 信じられないことに、彼女たちの全員が、僕よりも力が強かった。

 このジムに通っている人たちは皆、初等部の女の子も含めて、圧倒的な腕力を誇っているようだった。

 特にAクラスの女の子たちは、圧倒的なほどだ。

 このジムでは、実力差からクラス分けがされており、SクラスからFクラスにまで分かれている。

 最初の初心者コースがFクラスで、トレーニングの結果、実力があがるほどに、Eクラス、Dクラス、Cクラスとクラスもあがっていく。

 その最上クラスはSクラスなのだが、Sクラスに在籍している会員は全国でも数人しかいない。このジムにはSクラスはおらず、Aクラスの会員がわずか数名いるだけだった。

 腕に各クラスの階級を知らせる腕章の着用が義務づけれているので、その人がどのクラスに所属しているかは一目瞭然となっている。

 Aクラスのつける銀色の腕章はどことなく選ばれたものだけが着用を許されるような気品すらあり、ジムの中でも一目を置かれる存在だった。

 そんな各クラスにあって、僕のクラスはGクラス。初心者コースですらない見習いクラスだった。

 このジムに入会すると、まずはGクラスで何回かトレーニングを行い、このジムでやっていけると判断されると初心者コースのFクラスに進むことになる。

 普通だったらば、ほとんどの人たちはFクラスに進むことになるのだが、僕はそれすらも許されていなかった。

 端的に力が不足していたからだ。

 素質もなく、トレーニングの効果も見込めないと、筋力テストのときに言われてしまっていた。

 普通だったらば、この時点で退会しなければならないのだが、真由美ちゃんの好意で僕はこのジムにい続けることができていた。

 腕章の色は、真黄色。

 蛍光塗料で色づけられたようなその色は、遠くからでも見えるほどで、周囲の女の子はそれを見るとクスリと笑みを浮かべるのだった。


(でも、がんばらなきゃな)


 僕は周囲の女の子たちの強さにコンプレックスを感じながらも、トレーニングを続けていけばいつかFクラスにあがれると信じて、毎日ジムに通い、トレーニングに励んでいた。

 まあ、僕が毎日ジムにくるのは、ジムの営業が終わった後の楽しみのためということもあるのだけれど・・・・・・。


 *


 ジムは22時で終了する。

 24時間やっているジムがあるなか、このジムは睡眠もトレーニングのうちというモットーのもとで、22時にはジムはしまってしまうのだった。

 従業員の人たちが帰るのが23時。

 そしてそこからが僕と真由美ちゃんの二人だけの時間だった。

 僕が真由美ちゃんのものになってから、毎日のように続く、儀式の時間だった。


「あ・・・・あはん・・・・・ンンンっ!」


 ブッチュウ・・・ジュルッ・・・・ジュパジュル・・・・・・。


 深夜のジムに唾液音と喘ぎ声が響いていた。

 はるか高みから、真由美ちゃんのディープキスが僕の唇を熱烈に奪っていた。

 身長差と体格差。

 僕も真由美ちゃんも、お互い立ち上がっているというのに、その体の大きさの違いはあまりにも歴然としていた。

 僕は真由美ちゃんに、片手だけで抱きしめられて拘束されていた。

 ぎゅううっと、僕の胴体にまわった真由美ちゃんの腕が、僕のことを締め付けて離さない。

 それだけで、僕の肺からは空気が漏れるようで、さきほどから僕は呼吸困難に陥ってしまっていた。

 呼吸困難はそれだけではない。

 さきほどから執拗に続くディープキス。

 その過激さは僕から満足な呼吸すら奪い取っていた。


 ジュバアアッ!! ジュパジュルルるう!!


 息ができないほど、真由美ちゃんは過激に僕の唇を貪っていく。

 苦しくて苦しくて、酸素を求めて身をよじり、なんとかこの拘束から逃れようとするのだが、それは無理な話しだ。

 腕力で勝てない僕が、たとえ真由美ちゃんの片手一本だけの拘束だったとしても、それをふりほどくなんてことは、できるはずがなかった。


「アアン・・・・ひいい・・・・・・あ、あああ」


 僕はあえぎ声をあげる機械と化して、真由美ちゃんにされるがまま。

 とっくの昔に、下半身は真由美ちゃんの舌に溶かされてしまって、まったく力が入らない。

 結果として、僕を抱きしめて潰そうとする真由美ちゃんの片腕が僕のことを強引に立ち上がらせているのだった。

 それはまるで、倒れ込むことは許さないという意思表示。

 永遠と、この暴力的なまでの甘いディープキスを受け続けなければならないのではないかと思うほどの拘束だった。

 僕は約束を違えて、目をつぶってしまいそうに、


「目、開けなさい」


 そこでいきなり真由美ちゃんの声が頭上からした。

 体が底冷えするような冷たい声色。

 その絶対者としての口調に、僕は酸欠状態であることすら忘れ、ビクンと目を開けた。
 
 そこには、さきほどから、こちらを冷徹な眼で観察する真由美ちゃんの視線があった。


「ご、ごめムッグウ!?」


 謝罪の言葉すら許されず、真由美ちゃんに唇を奪われる。

 さらにディープキスは続く。

 その間、真由美ちゃんは僕の痴態を冷たい瞳で見下ろしてくるのだ。

 その視線からは逃れることはできない。

 永遠と、真由美ちゃんの舌とその視線に、人としての尊厳を奪われていく。

 僕はいつの間にか、パンツをぐっしょりさせるほどに射精していた。

 生命の危機を感じた人体が、子孫を残そうと必至な抵抗をする。

 その脈動を感じ取った真由美ちゃんが、くすりと笑って、さらに過激に僕の唇を貪った。

 続いていく。

 部屋には男の喘ぎ声と、唾液音だけが響き続けた。


 ・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・

 ・・・・

 ・・


 どさっ。

 1時間後、ようやく解放された。

 自分一人では立っていられないほどに骨抜きにされてしまっていた僕は、そのまま地面に倒れ込んだ。

 自分ながら息も絶え絶えといった感じで、ひゅーひゅーか細い呼吸で必至に酸素を求めているのが分かる。

 仰向けの格好。

 天井に設置された蛍光灯の光が妙にまぶしく自分に突き刺さってくる。

 そんな光を遮るようにして、ニンマリと笑みを浮かべた真由美ちゃんが、僕のことを屈み込んで見下ろしてきた。

 じっくりと、僕の情けない様子を観察される。


「ふふっ、相変わらず良助はキス弱いよね」


 勝ち誇った声。

 手を腰にやって、絶対強者である真由美ちゃんが、敗者である僕のことを責めていく。


「手加減してるっていうのに、もう息も絶え絶えって感じだもんね。情けないなー」


 真由美ちゃんはふふっと笑って、仕切り直すようにして言った。


「じゃあ、帰ろっか。シャワー浴びてくるから、それまでに回復しておいてよね」


 真由美ちゃんが颯爽とシャワールームへとむかっていった。

 僕はその間も、地面に仰向けになって倒れ、真由美ちゃんのキスの激しさに身悶えるしかなかったのだった。


(続く)