小さな手が男の頭を掴み、そのまま地面へと叩きつける。

 いや、叩きつけるというよりは、男の顔を地面で潰すという表現のほうが正しいか。

 ベギ、という肉と骨の砕ける音がして、その男の顔が潰される。

 その男の頭部を小さな手で掴んでいる幼女。

 身長は確実に140cmに満たない、小さな体。

 まだまだあどけなさの残るその幼女の顔は、愉悦にも似た快感で染まっていた。

 しかしその表情も、すぐに元の無表情なソレにとってかわられる。

 高圧的なイメージ。

 幼い体躯には不釣合いの、まるで女王様のような堂々とした威圧感をあたりへとふりまき始める。

 少しツリ目な感じの瞳は独特の赤みがかった瞳。

 少し生意気そうに見えるその表情は、しかし幼さを象徴する特徴でもあった。

 白と黒の、清純さと悪魔が同居したかのようなフリフリの服。

 その年齢にしては短すぎるスカートから伸びる幼い脚は、薄い生地で構成されたハイソックスで守られている。

 紺色をした長い髪は、黒のリボンで二つに分けられていて、それがその少女にとてもよく似合っていた。

 小さな女の子に特有のツインテール。

 その姿は、あくまでも11歳の少女の姿であり、まだまだ親に守られることを必要とする姿である。

 しかし、

 しかし、その少女が行っている行為は、決して11歳の少女には似つかない行為だった。


 虐殺。


 海賊船の上の男達は、その小さな少女によって、文字通り虐殺の憂き目にあっていた。

 辺りは血と臓物の匂いで一杯であり、その少女が船長である海賊船ルナテュームに乗り込んできた海賊達のほとんどが殺されつくされていた。

 その見るも無残な光景をつくりだしたその少女、クーは、尚も地面に叩きつけた男の頭を掴み、地面で男の顔を潰していく。

 クーの小さな手と、海賊船の木張りの床にサンドイッチにされる男。

 メキメキという自分の頭を潰していく音を、その男は絶望に染まりながら聞かされていた。


「ふふふ、どうしたのだ? 早く私の手から逃れないと、もうすぐお前の頭は潰れてしまうぞ」


 男の頭を片手で抑えながら、クーは高圧的に言葉を放つ。

 まったく自分の力に抗えなく、あっという間に殺されかけている男。

 その地べたにはいつくばっている男の顔を潰しながら、クーは見る者を寒くする乾いた笑顔を浮かべていた。

 フリフリの可愛らしい服に、可愛らしいその体躯。

 そして人形のように整った顔を破顔させながら、クーはさらに腕に力をこめた。


「ぶふあうううううううううはああああ!!」

「あははは、いい声だな。だがまだ殺さないぞ。じっくり時間をかけて殺してやる。有難く思え」


 少しづつ少しづつ、男をゆっくりと殺すことにしていたクーは、その予定通りに行動していた。

 クーがその気ならば、最初に男を地面に叩きつけた時点で、男は死んでいるはずなのである。

 それが今も生き残っているということは、何を隠さずクーが手加減をしているからに他ならない。


 ゆっくりと苦しめながら、絶望を感じさせながら殺す。

 その予定が達成されていることを知らせる男の断末魔に聞き入りながら、クーは満足げに笑う。

 クーの独特の赤みがかった目は、少女が何かに夢中になっているような輝きを放っている。

 そのどこから見ても小さな女の子。

 下手をしたら自分の腰のあたりまでしか身長のない幼女に、手も足もでなく男達が殺されていくのはまさに圧巻であった。

 自分の娘ほどしか年をとっていない少女に、純粋な力の差だけで負ける。

 本当に楽しそうに目を輝かせながら、クーは自分が船長を務める海賊船ルナテュームに乗り込んできた海賊達を殺しつくしていた。

 小さな体躯を縦横無尽に動かし、目にも留まらぬ速さで男達を殺しつくしたその姿。



 ある者は心臓を貫かれて絶命し、

 ある者はクーのまだ育ちきっていない幼い脚に頭を刈り取られる。

 ある者は身軽にジャンプして首にとりついてきたクーに、捻りとられるように首の骨を折られる。

 クーの攻撃を受けあまりの激痛にヒザをついた男は、クーに頭を掴まれ、幼く細い脚が放つ膝蹴りで顔面を破壊された。


 クーが右手と左手で1人づつ男の頭を掴み、左手に持つ男の顔で右手に持った男の顔を潰した。グリグリと男と男の顔を押し付けあって潰す。クーが飽きたように2人の男を離した時、そこには顔が潰れた2体の死体が出来上がっているだけ。


 地面に倒れこみ命乞いを始める男は、その土下座して地面にこすりつけた頭部を、クーによって踏み潰される。

 さらには自慢の怪力を活かし、クーは自分の何倍もの大きさを持つ男を肩の上に担ぐと、ベギイとその男の背骨を折る。

 戦意を喪失した海賊を、まるで遊んでいるかのように手加減して殴りまくり、その海賊の顔が原型をとどめなくなったところでとどめをさす。

 命乞いをし始める輩を真っ先に殺し始め、敵の海賊達は11歳の少女から悲鳴をあげて逃げ回ることしかできない。


 それでも「何でもしますからどうか助けてください」と命乞いをする男に、クーは自分の足を差し出して「では私の脚を舐めろ」と笑顔で命令し、それに屈辱で涙を流しながら従ってペロペロと舐め始めた男の頭を、クーはまるでサッカーボールを蹴るような要領で蹴り飛ばして殺す。



 11歳の少女に、手も足もでずに殺される。

 人形のように整った顔をした少女が、笑いながら本当に楽しそうに自分達のことを殺しつくしていく。

 
 そして、殺戮の10分間が過ぎ、現在では乗り込んできた男達のほとんどが絶命していた。

 残った海賊達も戦意を喪失し、クーに恐怖の眼差しを送って腰を抜かしているだけ。

 もはや誰もクーのことを攻撃しようだなどと考えるような輩は存在しなかった。

 だから、クーは目の前の標的に専念できた。


 男の頭を掴み、地面で潰す。


 ゆっくりと潰れていく男の悲鳴は実に甘美な響きがして、クーはその絶叫を聞いていて楽しそうに笑っていたのだが、その表情もかげり始めている。

 まったく自分の力に抗えないその男に、クーは飽きを感じ始めているのである。

 男を潰しながら、つまらなそうに顔をしかめる。

 男を片手で地面に叩きつけた状況で、大きなアクビをして、慌てて残った手で自分の口を隠した。

 危ない危ない、とクーは内心で汗をかく。


(いつもお父さんに、アクビをする時には口を隠しなさいと言われているのだ……気をつけなければ)


 幼い体躯に不釣合いの大人びた雰囲気をしたクーではあったが、しかし11歳であることには変わりはなく、自分のお父さんの言うことには素直に従うクーなのである。

 そんな可愛らしいことを心に思い浮かべるクーは、男を掴んでいる右腕にさらに力をこめることにした。

 人間を潰すというバカ力を発揮しているというのに、そこにはまるで力が入っているようには見えず、クーは余裕の表情を浮かべていた。


「アアアアアアあああああああああああああああああああああああああ!!」


 ベキベキと男の顔が潰れ、ビクっビクっと男の体が痙攣し始める。

 押さえつけられている頭を支点に、上半身と下半身がまるでエビのようにビクっビクっと痙攣し始める。

 それをしらけたように見ながら、クーは次の獲物にいこうと決心していた。


「ふん。もういい。死ね」


 バギイイイイ!!


 次の瞬間、男の頭は、その地面に陥没したかのように潰れ果てた。

 潰れた男の頭から溢れ出した体液で汚れた手を、クーはもはやボロ雑巾になっているその男の衣服でふき取る。

 しかしその体液がなかなか取れず、ムカっと顔をしかめたクーは、もう死に絶えている男の体を蹴り上げた。

 140cmにも満たない体のどこにそんなパワーがあるのか理解に苦しむほど、蹴り上げられた男の体は遠くに吹き飛んでいく。

 その行為にいささか気分を回復したクーは、あたりをグルっと見渡す。

 死体と破壊の跡しか見て取れないソコに、まだ生きている敵の姿を見つけるために、目をこらす。


(……あと4人、といったところか?)


 おそらく、今も海賊船ルナテュームにとりついている敵の船にはまだまだ敵がいるのだろうが、しかしこの船に乗り込んできた海賊達の姿は残り4人となっていた。


(ふむ。いつもだったら、コレだけやれば船ごと逃げ出していくんだが……まだ向こうはヤル気なのかな?)


 クーは不敵に敵の海賊船をみつめながら、そんなことを考えてみる。

 しかしそれも一瞬のことで「向こうがヤル気なら私も負けない」と結論をだしてから、まだ生き残っている敵の海賊に近づいていく。

 トコトコと、その歩き方は幼い少女そのまま。

 11歳の可愛らしい少女が、さらなる生贄の羊を求めて、敵にむかって歩いていく。



(続く)