「う、あ、こ、これは」


 町田は下半身裸のまま、オナニーの途中で固まってしまった。

 いいわけのできない状況。

 右手は自分のものを強く握り、そして左手にはティッシュが準備されている。

 なんとか言い繕おうとするのだが、優子は聞いていなかった。


「何をしているんですかと、聞いていますよ」


 優子が冷たい声で言った。

 さきほどの浴槽での人物とは別人のようだった。

 天使のような笑顔も、一緒にいるだけで安心感を与える様子も皆無だった。

 あるのは底冷えするような冷たさ。

 仁王立ちで、無表情のまま、冷たく、町田のことを見下ろしている。

 そこには、彩華のような女王様然とした雰囲気すらあって、町田は優子の質問に答えることすらできず、ひいっと悲鳴をもらすしかなかった。


「先輩、わたしと約束しましたよね」


 こつこつと、優子がゆっくりと歩いてこちらにくる。


「この家にいる間は、オナニーは禁止だって、約束しましたよね」


 優子が静かに怒りながら、町田の眼前に迫った。その可愛らしい顔を、しかし今は青い炎のように冷たくさせて、


「しましたよね?」

「は、はい」


 町田が顔をうつむかせて答えた。

 優子はそれを許さない。


「先輩、ちゃんと私の目を見てください」

「う」


 優子が右手を町田の顎にもっていき、ぐいっと力任せに上をむかした。

 彼女は、じっと、冷たい瞳で町田を見据える。

 まるで、町田の心の底を読みとってしまうような、神秘的な瞳だった。


「先輩は約束を破りました」


 優子が言った。


「だから、罰を受けてもらいます」

「ば、罰?」

「そうです」


 優子は、町田の下顎を片手でつかみながら、年上の男を見下ろしながら言った。


「先輩には、貞操帯をつけてもらいます」

「え?」

「聞こえなかったんですか、貞操帯です」


 なんでもないように言う優子。

 貞操帯。

 それを町田も聞いたことはあった。

 しかし、それがどういうものなのか、いまいち実感というか、優子が言っていることの理解が追いつかない。


「自分でしようにも絶対にできない状態にします。つまりですねーーー」


 優子は町田の耳元に顔を近づけた。

 そして、ねっとりとささやくように、その吐息が町田の耳元にかかるほどの近さで、


「ーーーー射精管理するということです」


 その言葉にびくっと町田の体が痙攣するのもつかの間、優子の両腕が町田の後頭部を抱き抱えた。

 そしてそのまま、優子は町田の顔面を自分の胸におしこみ、ぎゅううっと拘束した。



「むうううう!」

「意識があると面倒ですから、気絶させますね」


 こともなげに言う優子。

 彼女は、これまでの行為がお遊びであるといわんがばかりの力をもって、町田の顔面を自分の爆乳に押しつけ始める。

 今までどおり、町田は彼女の胸の中で息を吸おうとするのだが、それができない。

 顔面には、柔らかく、自分の顔よりも大きな胸のかたまり。

 完全に密着させられてしまい、息が全くできなかった。


「このまま私の胸で気絶させてあげます。起きたときには、すべて終わってますので、気にせず墜ちてください」


 ぎゅううううっ!!

 さらに力がこめられ、町田の体が痙攣する。

 肉の牢獄の中で、町田はなんとか酸素を求めて滑稽に体を暴れさせるのだが、優子がそれを許さない。

 圧倒的な体格差を前に、町田の抵抗は全く無効化されてしまう。

 そして、あっけなく町田の両腕は、ぶらんと下に垂れ下がり、体から力がなくなった。

 膝から崩れ落ちそうになり、それを優子が許さない。

 彼女は念入りに処理しようと、さらに十秒ほど、胸の中で拘束し、ようやく離した。

 どさっと、町田は床に仰向けに転がる。

 涙と涎で汚れた男の顔。

 優子は、一瞬だけ申し訳なさそうな表情を浮かべたが、意を決したように元の表情に戻った。

 そして、町田をまるで荷物扱いするかのように、右肩の上にのせて持ち上げると、そのまま町田の部屋をあとにするのだった。


 *


 部屋の中には、男と女がいた。

 すでにすべては終了しているらしく、男は処置を施された状態で、部屋の床、フローリングの上に横たわっている。

 男は全裸だ。
 
 上半身も下半身もすべての衣服をはぎとられ、だらしなく弛緩したまま、床の上に無造作に横たわり、気絶している。


「ーーーーーー」


 そんな男の近く。

 女は当然の権利のように衣服に身を包みながら、椅子に座っていた。

 その瞳は男にむけられておらず、さきほどから操作するスマートフォンに注意がむけられている。

 ラインをしているのか、さきほどから指がせわしなく動いている。誰かに何かの報告をしているようで、彼女の注意が男にむけられることはない。

 全裸で横たわった気絶した男と、

 その近くの椅子に座り、携帯を操作する女。

 その対比構造もあって、男のみすぼらしさはますます増していた。


「・・・・・・んんん」


 男ーーー町田がうめき声をあげた。

 彼はゆっくりと意識を回復していき、ぱちぱちと瞬きをして、意識を取り戻した。

 きょろきょろと怯えとも、現状を理解していない者特有の表情を浮かべた町田は、ゆっくりと上半身を起こした。

 頭上には、椅子に座ったまま携帯を操作する、優子の姿があった。


「起きましたか、先輩」


 優子が携帯をしまいながら言った。

 町田はまだ現状が理解できていない。

 どうやらここは優子の部屋で、彼女の甘い匂いが鼻孔に届いてくる。

 しかし、なぜ自分は優子の部屋にいるのか。

 なぜ全裸なのか。

 わけがわからず、言葉を発することもできなかった。


「まあ、見てもらえば早いと思います」


 優子は椅子から降り、町田の手をつかむと起きあがらせた。

 そして、町田の背後にまわりこむと、鏡台の前まで町田を誘導した。

 全身が映る大きな鏡だ。

 その真正面にたたされた町田は、初めて、自分の急所にあてがわれている違和感に気づいた。


「見てください、これが貞操帯です」


 どくん。

 町田の心臓が脈打つ。

 自分の股間。

 本来ならば肉棒がある位置にそれははめられていた。

 鉄の拘束具。

 自身の矮小なそれが、完全に覆い隠されてしまっていた。


「先輩は、これでもう勃起もできません」


 優子が町田の耳元でねっとりと囁く。

 その両手が町田の体を抱きしめた。


「どんな刺激を加えられようとも、射精することができない。勃起もできない。そんな男の権利をはぎ取られたのが今の先輩です」


 後ろでささやきながら。

 優子の両手で町田の胸板を這い、その長い指が町田を愛撫し始める。


「この状態で、先輩にはわたしの練習相手になってもらいます」

「練習相手?」

「そうです。本当はそこまでするつもりもなかったのですが、約束を破ってしまった先輩には罰を与えないといけません」


 さわさわと、触るか触らないかという絶妙な加減をもって、町田を愛撫しながら、


「男の人をどうすれば気持ちよくできるのか、その練習相手になってもらいます。ふふっ、先輩だってもう分かってるんでしょ?」

「え?」

「サッカー部の人たちにやっていた練習ですよ」


 どくん。

 さらに心臓が鼓動し、町田は動揺を隠せない。

 優子は背後から、さらに町田の耳元へと近づいた。

 そして、唇が町田の耳にかすかに触れるほどの近くで、ささやき声で、


「青山先輩たちが、びゅーびゅー射精しているところを食い入るように見てましたよね」

「う、あ」

「この手で、この口で、そして、この胸で」


 優子はぐいっと町田の背中にその爆乳を押しつけ、強調した。


「青山先輩と鈴木先輩が、搾り取られる姿を、たっぷり凝視してましたもんね」

「あ、ああああ・・・・・・」

「先輩も同じようにされたいですか?」

「ううう」

「私に搾り取られて、びゅーびゅー射精して、気持ちよすぎて白目むきながら射精したいですか?」

「ひ、ひいい」

「先輩が気絶しても止めてあげません。この手で牛乳を搾るみたいにしごきあげて、おっぱいで絞めあげて、この長い舌でたっぷり舐め回しちゃいます」

「あああ、ああああ」

「気絶してた先輩は快感が強すぎてすぐに目を覚ましてしまうんです。そこでさらに、搾って搾って、先輩はまた、びゅーびゅー射精して、精液まきちらしながら気絶しちゃうんです」


 ねっとりと囁かれる淫語に、町田はびくびくと体を震わせて興奮に身を支配される。

 あの優子が。

 優しそうな笑みを常に浮かべた後輩の女の子が。

 こんないやらしい言葉を自分の耳元でささやいている・・・・・。


「先輩が宣言してくれたら、すぐにそうしてあげますよ」


 優子はふふっと笑って、鏡に映った町田に言った。


「「僕は優子ちゃんのおっぱい奴隷です。優子ちゃんだけの物になります。千鶴先輩のことはもう忘れます」って」

「あああああ」

「宣言してくれたら、射精させてあげます」


 最後にねっとり囁いて、町田の脳裏に刻み込んでから、優子は町田の体を離した。

 どさっと、町田は地面に倒れる。

 言葉責めだけで精魂尽き果ててしまった町田はそのまま腰が抜けて床に座り込むしかない。

 町田は、ゆっくりと頭上を見上げた。

 そこには、こちらを妖しい笑みを浮かべながら見下ろす優子の姿があった。


「これが先輩の貞操帯の鍵です」


 優子の手に、小さな鍵が握られていた。


「この鍵はわたしが管理します。わたしの許可がなければ、貞操帯ははずせませんし、当然、先輩は射精もできません」


 優子は鍵を町田に見せつけた。

 そして、鍵にかけられたヒモを首にかけてぶらさげ、そして、それを自分の胸の中に隠すようにした。


「ふふっ、鍵は私の谷間の中で厳重に管理しますから、探しても無駄ですよ」

「う、ああああ」

「先輩の射精の権利は、私に奪われてしまったんです」


 ふふっと優子が笑う。

 町田はその支配される感覚に全身の快感がわきたつのを感じた。


「これから私が、先輩の射精管理をしてあげますからね♪」

つづく