次の日となり、千鶴が合宿に行く日になった。
早朝。
まだ新聞さえ配られない時間帯である。千鶴の家の玄関では、すっかり準備を整えた千鶴と、それを見送る町田の姿があった。
「それじゃあ、行ってくるね」
千鶴が笑顔で言った。
女子ソフト部のジャージ姿。そんなやぼったい格好であっても千鶴の魅力は失われておらず、天真爛漫なスポーツ少女といった感じがあった。
「弘樹くんのことは、ちゃんと昨日、女子ソフト部の子たちには説明してあるからさ」
「う、うん。でも、ほんとにいいのかな」
「大丈夫だって。日中は練習の手伝いとかしてくれれば、誰も文句は言わないよ。みんなも、納得してくれてたみたいだしさ」
そりゃあ、千鶴のお願いならば、ほかの女子部員たちは嫌とはいえないだろうと町田は思う。
しかし、いざ自分が行ったときにはどうだろうか。
普段、部室として使う部屋に、男が寝泊まりをするのだ。
文句を言われたりしないだろうか、町田は不安にかられていた。
「そんなに心配しないでよ。みんないいこだからさ」
「で、でも」
「大丈夫だって。彩華ちゃんにもちゃんと弘樹くんのことはよろしくって伝えてあるしさ。あ、彩華ちゃんっていうのは一年生のキャッチャーね。ほら、試合のときにいたでしょ」
「それは知ってるけど」
「彼女が一年生のリーダー的な存在なんだよね。そんな彩華ちゃんに任せてあるんだから、大丈夫だって。ね?」
少し心配だったが、いつまでも駄々をこねていても仕方がない。
というか、そもそも千鶴がこんなことまでしてくれるということのほうがありがたいのだ。
町田は、気を取り直して言った。
「うん、そうだよね。いろいろありがとね、千鶴さん」
「どういたしましてだよ。それじゃあ、もういくね」
「うん、いってらっしゃい・・・・・っていうのも変か」
えへへ、と二人の間で笑いがこぼれた。
こうしたやりとりも、もうできなくなるのかと思うと町田としても残念に思う気持ちがあった。
なんだかんいって、この夏休みで、千鶴との仲が深まったのは確かだ。
ひょっとしたら、もしかしたら、このまま千鶴と付き合うことだってできるかもしれない。
そう思うと、町田の頬も若干ゆるんできた。
「あ、そうだそうだ」
玄関のドアをあけようとしていた千鶴が振り返った。
忘れてた忘れてたと、町田のほうに近づいてくる。
「どうしたの、何か忘れもの」
「うん、そうそう。当分できないからね」
「え、ち、千鶴ちゃ・・・・んんッ!」
ディープキス。
近づいてきた千鶴が、勢いよく町田の唇を貪り喰らった。
「ん・・・ンン・・・・んふう」
じゅっぱああ!!
ジュルジュルるる!!
町田の体からは力がなくなり、瞳はとろんとトロケてしまう。
それを千鶴が淡々とした目つきで観察し、町田が喘いだポイントを重点的に攻め続ける。
町田の膝が快楽に折れ、地面に倒れ込んだところで、ようやく終わった。
「えへへ、当分できないから、念入りにやっておきました〜」
おどけたように言う千鶴。
さきほどまでの妖艶な娼婦のような雰囲気はなりを潜め、元のスポーツ少女然とした爽やかな笑顔だった。
そんなギャップに、町田はさらにやられてしまった。
(しゅ、しゅごすぎるうう)
腰が抜け、へなへなと地面に倒れ込んでいる町田。
彼は快楽に震える体を感じながら、千鶴のことを見上げることしかできなかった。
「も〜、ちょっとキスしただけで腰が抜けるなんて、相変わらず情けないな〜」
「あ、・・・・ああ」
「えへへ。帰ってきたら、もっとしようね」
それだけ言うと、千鶴は町田を残して出ていってしまった。
あとには、千鶴の舌で下半身をとろけさせられてしまった町田だけが残された。
結局、彼が立ち上げることができるようになるまで、かなりの時間がかかることになった。
(続く)