「い、嫌だ」


 町田が意を決して言った。

 前進を恐怖が支配する中、それでも町田は言った。


「だ、誰がそんなこと言うもんか。僕は、千鶴ちゃんが大好きなんだ!」


 しーんと、部室が静まり変える。

 女子部員たちは皆、絶句して押し黙り、空気は夏なのに冷えきったかのようだった。


「・・・・・・・・・・・・・」

「ヒ、ギイイイイイ!!」


 彩華が無言で足に力をこめた。

 ぼこっと浮き出た筋力。いきなり全力のその力を見れば、彩華が静かに激怒していることが見て取れた。

 町田から黒目がなくなり、ぶくぶくと口から泡がでてくる。

 あとコンマ1秒でも締められれば、またしても気絶する。

 その限界ぎりぎりの中で、彩華は足の力を緩めてやった。

 首四の字はそのまま、

 その太股の中に町田を閉じこめながら、彩華は淡々と町田のことを見下ろしていた。

 無表情。

 冷たい、冷たい瞳。

 その彼女を前にすれば、どんな男でも言うことを必ず聞くであろう、絶対的な存在感。

 そのまま、彩華は言った。


「最後よ」


 彩華は、ぐいっと一瞬だけ脚に力をこめ、己の優位性を町田に見せつけてから、


「何かいいたいことは?」

「ぼ、僕は千鶴ちゃんが、だいグゲエエエ!!」


 勢いよく彩華の脚が締められる。

 言葉の途中で断末魔をあげた町田。

 今度の彩華に慈悲はなく、そのまま町田の意識を刈り取った。

 ギチギチと、彩華の太股が、町田の首の肉を潰しにかかる。

 完全に意識がなくなったことを確認した彩華は、また脚の力を緩めた。

 ボゴンと、町田の顔面を拳で殴り、容赦なく起こす。

 そして、


「何か言いたいことは?」

「千鶴ちゃああん、千鶴ちゃグゲエエエエエ!!」


 繰り返される。

 何度も何度も。

 彩華の首締めと、町田の千鶴を呼ぶ哀れな絶叫。

 それが幾度となく続き、町田の限界が近づき始めた。


「ちづるちゃあんん、たすけてえええ、ちづるちゃあんん」


 恥も外聞もなく、彩華の太股の中で千鶴に助けを求める町田。

 その顔は既に正視することすら躊躇われるような凄惨なものになっていた。

 もはや人間としての尊厳は既になかった。

 顔は腫れ上がり、ドス黒く真っ赤になって、瞼が大きく腫れて別人のようになっている。


「・・・・・・・・・」


 彩華は、自分の太股の中で、ひたすら千鶴に助けを呼ぶ町田を見て、いらだちを募らせていた。

 今までは、すべて自分の思うがままにしてきた。

 自分がこうと決めたら必ず実行してきたし、調教に耐えられる男なんて皆無だった。

 それがどうだろう。

 情けなくも泣き叫ぶだけのこの男は、最後の最後で私に屈服せず、別の女の名前を呼ぶだけ。

 それがどうしても許せず、彩華は危険と分かっていながら、またしても脚に力をこめようとする。

 それを優子が止めた。


「彩ちゃん。もうダメだよ」

「なにがよ」

「それ以上は死んじゃうよ。というか、ふつうだったらもうとっくに死んじゃってるもん。それ以上はダメ」


 ちらっと彩華は町田を見下ろす。

 その惨状に、自分ながらひどいものだわと感心してしまう。

 しかし、その男は屈服していないのだ。

 今も、最愛の人の名前を呼んでいる。


「ちづるちゃあんん、たすけてえええ、たすけてええ、ちづるちゃあああん」


 我慢ならなかった。

 矮小な男が、ここまで忠誠を誓えるということに、我慢ならなかった。

 私でなくてもいい。

 こいつを屈服させることができるなら、それは私じゃなくてもいい。

 初めて感じるその思いにかられ、出てきたのは彩華自身も驚く言葉だった。


「優子」


 彼女は、かたわらに佇む女の子に対して言った。


「あんたがやりなさい」

「え?」

「あんたが、快楽責めでこの男を屈服させなさい」


 驚きが部室中に流れる。

 それは優子も同じで、さらには彩華自身も同じく驚きの思いで自分の言葉を聞いていた。


「あんたに拒否権はないから」


 彩華が続ける。


「この男を屈服させて、千鶴先輩への思いを断ち切らせられなかったら、私が兄貴を調教するわ。こいつ以上の目にあわせる」


 彩華は、困惑する優子に畳みかけた。


「どうするの、優子」


 問いかけられた優子は、うううう、と思い悩んだ様子を見せた。

 しかし、最初から答えは決まっていたのだ。

 優子にとって、彩華の兄は、それほどまでに重要な存在だった。


「分かったよ、も〜」


 拗ねたように優子が言った。


「その代わり、まずは先輩の治療が先だからね。私の病院で2週間は絶対安静で入院させるから」

「2週間って、そしたら夏休みは残り1週間しかないわよ。千鶴先輩が帰ってくる前にできるの」

「それは大丈夫だよ」


 優子が言った。

 満面の笑み、天使の笑みで。


「男の子なんて、大事なのは性欲なんだもん。射精管理して、徹底的に調教すれば、誰だってみんな、思うがままになっちゃうから」


 優子は笑いながら続けた。

 それはあくまでも優しげな、ほんわかとした笑顔だった。


「1週間あれば十分だし。それに、千鶴先輩にも悪いから、町田先輩のモノには指一本触れないってルールで、やるつもり」


 まあ、と彼女は続けて、


「もしかしたら、3日もあれば十分かもしれないけどね」


(続く)