ブロンドの女が一人、鎖に繋がれて拘束されていた。
場所は地下牢の一角。
表向きは健全な研究施設として名を馳せている施設の地下にある堅牢な牢屋だ。
古臭い、鉄の檻でしきられた地下牢。
それは、非合法な研究をしているその場所だからこその設備だった。
「へっ、噂にきいたエージェントっていうから警戒してたっていうのに、とんだ期待はずれだったなあ」
地下牢に繋がれた女に侮蔑的な視線を送りながら、下卑た男が口を開いた。
鎖で繋がれた女のことを見つめているのはその男だけではなく、牢屋の前には10人ほどの男たちがたむろしていた。
彼らは皆、捕らえた女を見物しにきた組織の構成員だった。
「ブルー・マリーも地に落ちたもんだ。そこらのか弱い少女と同じじゃねえか」
「まったくだな」
牢屋に繋がれた女―――ブルー・マリーは、そんな男たちを淡々とした目付きで見つめかえすだけだった。
ブロンドの髪と、大胆なヘソだしルック。
細身の体なのにも関わらずその胸は大きくて、男の劣情を催させるのに十分な形をしている。
そんな彼女は、男たちが集まり、手間がはぶけたことに感謝していた。
マリーは、ふふふ、と不敵に笑ってみせた。
そんな彼女の様子に気付いた男たちは、厭らしい視線をもってマリーの体を見つめながら言った。
「なんだ、なに笑ってやがる?」
「ふふふ。いや別に・・・・・・ただ、どこにでも、頭がおめでたい人たちはいるもんだなと思ってね」
「なに!?」
「わたしの本当の力、見せてあげるわ」
マリーはどこか嗜虐的ともとれる表情を浮かべながら言った。
彼女の両手は鎖で繋がれ、バンザイをさせられるように頭の上で固定化されている。
それは普通なら、脱出不可能な手枷といえるだろう。
しかし―――
「よいしょっと」
まったく力をいれていない様子のまま、マリーは、その手枷を引き千切って見せた。
ベッギイイン! と盛大な音が響き、鉄が砕け散った。
鎖の破片が周囲に飛び散った。
満足気な表情を浮かべるマリー。その両腕が完全に自由になった。
「は? はあああ!?」
驚きを隠せない様子の男たちは、次の瞬間さらなる驚きを得ていた。
足枷が、またしても簡単に引き千切られたのだ。
マリーは、まったくといっていいほど力をいれていないように見えた。
それにも関わらず。鎖でできた手枷と足枷が、いとも簡単に破壊されてしまったのだ。
細身の体のどこにそんな力があるのか・・・・・・その場にいる男たちは、内心、戦々恐々としていた。
「ふ、ふんっ。どんな手品を使ったのかしらないが、そこまでだぜ。いくらなんでも、この鉄檻から逃げることはできないんだからな」
マリーが収容されているのは、映画でよく出てきそうな一昔前の牢屋だ。
その頑丈な鉄の棒で囲われている檻。そこから抜け出すことはできないだろう―――男たちはそう思っていた。
それに対して、マリーは「ふう」と溜息を吐くだけだった。
そして、目の前の男たちに向かって言った。
「あなたたち、まだ分からないの? わたしはワザと捕まってあげたの。研究施設に侵入するためにね」
「な、なんだとっ!?」
「あなたたちにはもう用はないから。さっさとすましてもらうわ」
言うと、マリーは目の前の鉄の棒を掴んだ。
そして、ふんっ、というかけ声とともに、なんなく鉄の檻を折り曲げてしまった。
グニャリと、飴細工のように鉄の棒が曲がり、そして人間が通れるくらいの空間が作り出された。
「はい、さようなら」
マリーは、呆けた表情しか浮かべられない男に向かって、右こぶしをお見舞いした。
細身の体からは想像もつかないような怪力。
右ストレートをくらった男は顔面を破壊され、首の骨を折られながら吹っ飛び、そして壁にめり込んでしまった。
「ひいいいいいい!」
悲鳴をあげ、脱兎のごとく逃げ出そうとする男たち。
しかし、マリーから逃げ切れるはずもない。
狭い牢屋の通路もあって、マリーは苦もなく男たちを狩っていった。
拳をくらわせ男の体に穴をあけ、
蹴りで男の体を吹き飛ばし壁にめり込ませる。
かかと落としをもって男の体を地面に叩き落すと、そのままグリイっと踏みしめ潰した。
そんな虐殺行動を行っているマリーは淡々としたものだった。
まるで義務感といってもいいような様子で、一人、また一人と男の命を奪っていく。
まったくの余裕。
赤子の手をひねるよりも容易に、男たちは細身の女によって殺されていった。
「あなたで最後よッ!」
「ひいいい! やめ、許してえええ!」
男の命乞いには取り合わず、マリーは最後の男を血祭りにあげることにした。
男の胴体を背後から抱きしめる。
88センチの巨乳が男の体に密着し蠱惑的に潰れるが、それは一瞬のことだった。
「ふんっ!」
かけ声とともに、ジャーマンスープレックスが炸裂した。
マリーの細身の体が後ろに反れ、エビぞりになり、男の頭部を地面へと突きたてた。
ドッガンンンンン!!
盛大な音とともに、地面を形成しているレンガが破壊された。
周囲にレンガの破片が飛び散り、ところどころ亀裂が走っている。その細身の体からは想像もつかない怪力だった。
「ふう」
美しい動作とともにマリーは上体を戻し、背後を見据えた。
そこには、地面に顔を突っ込み、絶命している男の姿があった。
胴体から足にかけてが、ビクビクと陸にあげられた魚のように痙攣している。
それを見たマリーは、満足気な表情を浮かべると、
「じゃあねっ!」
大きな声でそう言い、地下牢から出て行った。
彼女の体には肉片どころか返り血一つついていなかった。
あれだけの惨殺を仕出かしたというのに、その事実は驚嘆すべきことである。
まったくの余裕で、返り血一つ浴びずに10人の男たちを抹殺したブルー・マリー。
彼女のエージェントとしての伝説は、まだ始まったばかりだった。
おわり