カーテンから差し込む、こもれびで目を覚ますと、そこはベットの上だった。
大きなベットだ。
特注品だというツインベット。
それが備え付けられている部屋もまた広く、はて、ここはどこだろうと考えてみるに、
「あ、そうか。ここは奈津美の・・・」
寝ぼけた頭で考えていると、昨日のことを思いだして、ブルっと身震いした。
ボロ雑巾のようになるまで嬲られ、奈津美の足を舐めさせられたこと。
ペロペロと犬のように、幼馴染の足を舐め続けたこと。
そんな昨日の記憶を思い出すに、俺は戦慄を隠しきれず、体を震わせるしかなかった。
「ん? 翔ちゃん、どうしたの?」
と、あまりの恐ろしさで震えていると、隣から声がした。
それは、俺に恐怖を与えている元凶が発した声だった。
隣―――
そこには、俺と同じベットに寝そべる、奈津美の姿が……
「翔ちゃん、おはよう」
「あ、ああ……おはよう」
普段と変わることのない優しげな声色に、俺は一瞬、恐怖心を忘れて素であいさつをしていた。
それとともに、自分の瞳が奈津美の姿を凝視していることに気付く。
そうだ。
俺は、昨日、奈津美と一緒のベットで寝ていたのだ。
(なにか……いい匂いがする)
女の子の発するシャンプーの匂い。
甘い芳香が全身を包み込むようにして嗅ぐわってくる。
さらには、
(奈津美のやつ、ほんとすごい体になったよなあ)
思わず、見蕩れてしまう俺だった。
俺の顔をキョトンとした表情で見つめてくる奈津美。
そのつぶらな瞳は、いつまでも見つめていたいという誘惑にかられるほどに魅力的だった。
さらには、可愛らしいパジャマに身を包んだその肢体。
夏場が近いだけあって、そのパジャマは布地が薄い。
だから、奈津美の見事に育った体が強調される結果となっていた。
胸元がはだけていて、その大きな双丘が見え隠れする。
その巨乳の先には蠱惑的な突起が突き出ているのだが……まさかノーブラなのだろうか。
だったら、背中ごしに感じていたあの感触は、奈津美の……
「翔ちゃん? ほんとにどうしたの?」
思わず見蕩れていると、心配顔の奈津美が、至近距離から俺のことを覗きこんでいた。
「あ、ああ。なんでもない。それより、もう起きないか? ちょっと早いけどさ」
「うん、そうだね。じゃあ奈津美、朝ごはんの用意するよ」
立ち上がり、その大きな体を軽快に動かして、ベットの上をから降りる奈津美。
俺はその後を追って、寝室から出て行った。
●●●
「なあ、なんか手伝おうか?」
トントン、と包丁がまな板を叩く音を聞きながら、俺は奈津美に向かって口を開いた。
場所は豪華な調理器具が並ぶキッチンで、そこで奈津美は慣れた手つきで料理をしている
それを俺は、手持ち無沙汰に眺めながら、言葉を発したのだった。
「ううん、翔ちゃんはゆっくりしておいてよ。もうすぐできるからさ」
「でもなあ……」
「ふふふ、翔ちゃんのご飯は、これから全部、奈津美がつくってあげるからね。遠慮しなくていいんだよ?」
「でも、やっぱり悪いよ。なんか俺にも手伝わせてくれ」
「もう……」
しょうがないなあ、とでも言いそうな口調で、奈津美は一息をいれる。
逡巡したそぶりを見せていた奈津美は、「あ、そうだ」と、何かに気付いたようで、
「じゃあさ、昨日のおさらいしようよ」
「昨日のおさらい?」
「そうだよ。忠誠の練習」
「あ」
その瞬間、ドクンと心臓が脈打った。
昨日の記憶が嫌が応でも蘇ってくる。
狼狽する俺に、奈津美はトントンと包丁を止めずに言った。
「はい、じゃあ忠誠。まず、左足ね」
「…………」
こちらに振り向くことなく、料理を継続したままで、奈津美が左足をくいっと強調する。
スリッパを着用した奈津美の足に、俺の目は釘付けになる。
昨日、あれだけそこに口付けをし、さらには舌を這わせ続けたというのに、やはり俺の気持ちのどこかにはソレを拒否する心があった。
一瞬、心と体が硬直する。
それを、奈津美は見逃さなかった。
「ほら、ダメだよ。女の子に命令されたら、すぐにやらなきゃ」
「な、奈津美……」
「しょうがないな。翔ちゃんのために、朝からちゃんと調教してあげるよ」
「や、や、うわああ!!」
突如として、俺の体がとてつもない力に引っ張られるのを感じた。
自分の力では抗いようもない力―――女の子にだけ備わった≪能力≫である。
たちまり、俺は地面に這い蹲らされ、さらにはズルズルと奈津美の方向へと引きずられていく。
そして、
「はい。捕まえた」
「ひ、ひいいいい!!」
奈津美は、地面に四つん這いになった俺の体を跨ぐ。
そして、その魅力的な太腿で、俺の胴体を挟み込んでしまった。
俺のわき腹のあたりに、奈津美のスベスベした脚の感触を感じる。
暑いからか、奈津美の今の格好はカジュアルなショートパンツだけ……。
結果、俺の体は奈津美の生脚に包み込まれるようになってしまっていて……。
「翔ちゃん、女の子の命令に従わないと、こうされちゃうんだよ?」
えい、と可愛らしい声が響いた。
それとともに、俺の体を挟み込んでいる奈津美の太腿に、少しだけ筋肉のスジが浮いた。
すさまじい激痛が、俺の胴体を貫いた。
メキメキメキ!!
バギメキベキ!!
バギベキイイ!!
「ギャアアあああッッ!!」
潰されている。
俺の体が、奈津美の生脚によって、潰されていっている。
四つん這いになりながら、俺は奈津美の両脚に挟み込まれたまま、ぎゅううう、と絞めつけられていて……。
「ヒッギャああ!! や、やみゃああ!!」
「もう。翔ちゃんが悪いんだからね。自業自得だよ」
「ヒイイイイ!! ぐぐるじぎいい!!」
「奈津美が料理している間、ちょっとそこで反省だよ、翔ちゃん」
奈津美は、こんなにも苛烈な絞めつけをしながらも、平然と立っているだけだった。
俺が暴れるのにも委細構わず、スラっとした脚で、高貴な出で立ちで立つだけである。
しかし、その両脚の間には、哀れな男の体が挟み込まれているのだ。
男の体を絞めつけ圧迫しながらも、平然として立つだけの女の子。
しかも、奈津美は尚も料理をしたままだった。
トントンという包丁の音が、頭上から聞こえてくる。
男のことを両脚でプレスにかけながら、平然と料理を継続する奈津美。
きっと、奈津美にとってこんな行為、なんでもないことなのだろう。
息をするのと同じくらいに、自然にできてしまうことなのだろう。
片手間に俺の力を圧倒し、調教してしまう力……。
俺は、今更ながら奈津美の力に恐怖していた。
「らんら〜ん。ん〜、ちょっとお味噌汁、味が濃かったかな?」
「ヒッギャアああ!! もう、分かったぎゃががが!!」
「あ、もうご飯炊き上がったかな?」
「命令どおりじばッギャアア!! じばずがら許してくだガッガガ!!」
「うん、大丈夫みたい」
料理をする奈津美と、
そんな彼女の太腿に挟み込まれて悶絶する男の図。
スラっと伸びた生脚に挟み込まれ、いつまでも悲鳴をあげ続けるしかなかった。
●●●
ごちそうさまでした、という言葉とともに、俺はハシを置いた。
目の前には、すべてがカラになった茶碗やら皿が置かれている。
じっさい、奈津美の料理はとてもおいしかった。
それは、小学校時代から知っていたことではあるが、ここにきてさらに、奈津美の料理の腕があがったような気がする。
散々嬲られたわき腹あたりが痛み、食べ物を嚥下するたびに激痛がはしったが、それをおしても奈津美の料理はうまかった。
「翔ちゃん、全部食べてくれたんだね……嬉しいよ」
「当たり前だろ。こんな美味しい料理残すなんて、考えられない」
「翔ちゃん……」
どこか、うっとりとした視線で、奈津美が俺のことを見つめてくる。
その潤んだ瞳の破壊力は相当なものがあり、俺は気恥ずかしさに視線をそむけることしかできなかった。
(しかし、調教するときもそうだけど、奈津美の調子がいつもと一緒で調子が狂うな……)
あれだけの力を持ち、俺のことを嬲るだけ嬲っているというのに、普段の奈津美の様子は小学校時代から変わらないものだった。
男に対する軽蔑感とか、
下等生物でも見るような冷たい感情は、奈津美からは感じられない。
それどころか、目の前の奈津美は、俺の知っている気弱な少女のままだった。
そのギャップ。
尋常ならざる力をもって男子のことを調教する奈津美と、今目の前にいる奈津美。
俺はそのちぐはぐなギャップに、戸惑うばかりだった。
と、俺がそんな戸惑いを覚えているとは知らずに、奈津美が、
「でも翔ちゃん。何度も言うようだけど、女の子の命令は、絶対に服従しないとダメだからね」
「あ、ああ」
「ほんとに分かってる? 言っとくけど、奈津美の調教は甘いほうだからね。五体満足ですんでるんだから……これが、もっと過激な女の子になると……」
そこで不気味に言葉を切る奈津美。
俺は、ゴクリと生唾を飲んだ。
「ねえ翔ちゃん。お願いだから、学校で女の子から忠誠を要求されたら、ちゃんと要求どおりにするんだよ?」
「学校でも……要求されるのか?」
「そうだよ。むしろ、そっちのほうが本番だもん。特に今日はね」
「今日、なにかあるのか?」
「そ、そんなことより。約束して翔ちゃん。要求されたら、ちゃんと忠誠を誓うって」
「あ、ああ」
懇願するように発せられる言葉に、思わず頷いてしまう。
しかし、どうしろというんだ。
泣きそうになるくらいに眉を下げている奈津美の表情からは、俺を心配している様子しか見て取ることはできない。
そんな奈津美の願いを、俺は無下に断ることなどできなかった。
「ほんと!? ぜったいだよ。ぜったい、命令どおりに忠誠してね?」
「ああ……分かったよ」
途端に、奈津美は安堵から、ヒマワリのような笑顔を浮かべた。
「あ〜、よかった。奈津美、本当に心配で心配で……」
「…………」
「じゃあ、翔ちゃん。練習しておこうね。はい、忠誠」
くいっと、奈津美はテーブルの下で右足を前にだした。
俺と奈津美は向かい合って椅子に座っている。
一瞬の躊躇。
しかし俺は、ゆっくりと椅子から降り、テーブルの下に潜り込んだ。
そのまま四つん這いで、はいはいをするように奈津美に近づいた。
「…………」
テーブルの下の薄暗い中にあって、俺は地べたに座り込み、椅子に座ったままの奈津美の姿を見あげた。
ニコニコと、俺の行為を見守る少女の姿がそこにはある。
俺は、奈津美の大きな足裏に手を沿え、そして―――
「し、失礼します」
静かに、奈津美の足の甲に口付けした。
唇に、奈津美の足の感触が伝わる。
さらには、その体温が唇ごしに伝わってくる。
そのとき、何故か俺の体の奥でジーンと響くものがあった。
それは屈辱に似た感情だったが、不快感だけではなかった。
まるで、全身を包み込む安心感というか……
絶対的な優位者に庇護されている陶酔感というか……
とにかく、形容しがたい感情が、俺の全身を包み込むのを感じた。
「うん、ちゃんとできてるね。女の子の許しがでるまで、口付けはしたままじゃなきゃダメだよ?」
「……ふぁい」
「ふふふ、翔ちゃんの鼻息があたって、なんだかくすぐったいよ」
「…………」
椅子に座った奈津美と、跪いてその足の甲にキスをする男。
奈津美の大きな足の感触にドキドキしている自分を発見しながら、俺は口付けを継続する
そして、3分間ほどたったあと、ようやく頭上から許しの声が響くのを聞いた。
「はい、よし。もういいよ、翔ちゃん」
「ぷはああ!」
口付けをやめ、俺は跪いたまま、椅子に座った奈津美を見上げた。
高身長の奈津美の顔が、はるか高みにあるように感じた。
自分には手の届かないはるか高みに、彼女はいるような……そんな印象を受けた。
「うん。これなら大丈夫。えらいよ、翔ちゃん」
「あ、ありがとう……ございます」
奈津美の手が俺の頭を優しくなでる。
その感触がどこまでも気持ちよくて、俺は命令されてないのに、奈津美に対して敬語をつかったことに気がついていなかった。
(続く)