朝井の体を潰したまま奈津実ちゃんが体育館を一周する。

 男子たちはお通夜みたいになっていた。

 女子たちだけが「くすくす」と笑っている。

 俺たちの怯えた姿を見て楽しんでいる女子たちが恐ろしい。まる獲物を見る視線だった。これから始まることを心底楽しみにしているような残酷な好奇心がその瞳に浮かんでいた。



「それでは能力の実演はこの辺で終わりにしましょう」



 奈津実ちゃんが壇上に戻って言う。

 彼女の左右には、翔太先輩と朝井の体が宙に浮かんでいて、なおもバギバギと潰されていた。



「みなさんにも身をもって体験してもらったほうがいいですからね」



 女子たちの歓声があがる。

 何人かの女子たちがはやくも立ち上がって、周囲の女子たちに注意されていた。



「お待たせしました、新入生女子のみなさん」



 奈津実ちゃんがニッコリと笑って、



「暴力措置の制限を解放します。存分に楽しんでください」



 終わった。

 これが俺たち男子が尊厳ある人間でいられた最後だった。

 そこから始まったのは地獄だ。

 2歳年下の女の子たち―――これから同級生となる彼女たちが襲いかかってきた。



 *



「ひゃ、ひゃめろおおおおッ」



 女子たちの席に近い男子から順に血祭りにあげられた。

 体格の良い高身長の彼女たちによって、一人、また一人と餌食になっていく。

 今もまた一人の男子がつかまって、その胸ぐらをつかまれ、宙づりにされてしまった。



「あはっ♡ 君の体ってすごくチビだね♡」

「ひいいいいいッ!」

「ほら、君の足、地面につかなくなっちゃった♡」

「ひゃめでええッ!」

「ふふっ♡ もう逃げられないね」



 高身長の女子が仁王立ちし、低身長の男子を宙づりにしている。

 黒髪のショートカットが印象的なスポーツ少女だ。

 本来であれば爽やかな笑顔が似合いそうな天真爛漫とした女の子。

 そんな女の子が純粋無垢なサディストに変貌していた。

 自分よりもはるかに劣った貧弱チビ男にむかって、黒髪少女が残酷に宣告した。



「ビンタするね?」



 バッチイイインッ♡

 バッギイイイイッ♡



「あひいいいいいい!」



 往復ビンタ。

 黒髪少女が、左手で男子の胸ぐらをつかんで宙づりにして、右手で往復ビンタをしていく。

 大きな張り手が炸裂するたびに男子の顔が左右にはじけ飛ぶ。

 両頬を真っ赤に腫らした男子が怯えきって悲鳴をあげる。

 じたばたと暴れて逃げようとするのだが、胸ぐらをつかまれて宙づりにされているのでそれもできない。

 女の子だけが、勝ち誇ったようにニンマリとした笑顔を浮かべていた。



「あはっ♡ たのしー♡」



 残酷な往復ビンタを繰り返しながら黒髪少女が言う。



「これからは毎日コレができるんだね♡ もう我慢しなくていいんだ♡」

「たじゅげでえええええッ!」

「ん♡ 悲鳴もサイコー♡ もっと聞かせてよ♡」



 バッチイイインンッ♡



 黒髪少女がさらにビンタを繰り返していく。

 それがずっと続いた。



 *



「おらっ。おまえの体、あたしのケツで潰れたな」



 体育館中で蹂躙が繰り広げられている。

 黒髪少女の横では、制服を着崩したギャル少女が、あお向けに倒れた男子の胴体に座っていた。



 どっしいいいんっ♡



 そんな音が聞こえてきそうなほどの巨大なお尻だった。

 ギャル少女のスカートは極限まで短くなっている。

 だからこそ生尻が直接に貧弱男子の胴体を押し潰す結果になっていた。

 艶めかしいほど生命力に満ちた大きな爆尻が、あお向けに倒れた男子を文字通り生き埋めにしていた。



「ぐげええええええッ!」



 男子はのたうちまわるばかりだった。

 どっしりと潰された胴体は生尻の山に完全に潰され、見えなくなってしまっている。ド迫力の爆尻を前に貧弱男子にできることは何もなく、肺まで「ぺっちゃんこ♡」にされて、さきほどから呼吸もできずに悶え苦しんでいた。



「きゃはっ♡ おいおい、あたしは座ってるだけだぞ?」



 ギャル少女が座布団にしている男子を見下ろして言う。



「それなのに、おまえは死にそうになってるな?」

「ぐええええええええええッ!」

「じたばた暴れてるのに、あたしのケツから逃げることもできない」

「おええええええええええッ!」

「アハハッ♡ えづきながら死んでく♡ あたしのケツに潰されてくな♡」



 もっと体重かけてやるよ。



 そんな言葉が死刑宣告として響く。

 貧弱男子が驚愕の眼を見開いて絶望に震えている。

 命乞いをしようにも、肺まで「ぺっちゃんこ♡」にされているせいで言葉は口から出ない。

 口をパクパクさせて釣りあげられた魚になった男子がボロボロと涙を流し、



「潰れろ♡」



 ぐりぐりぐりっ♡



「オエエエエエエエエエエエエッ♡」



 ギャル少女が爆尻をグリグリと貧弱男子に押しつけた。

 それだけで男子は死ぬ。

 2歳年下のギャル少女の発達した爆尻によって「ぺっちゃんこ♡」にされていく。すぐに白目をむいて「びぐんびぐんっ♡」。痙攣を始めた貧弱男子を見下ろして、ギャル少女がニンマリと笑っていた。



 *



「センパ~イ、ウチのおっぱい、どうッスか?」



 ナマイキそうな女の子だ。

 吊り目が印象的な後輩少女。

 どうやらその男女は初等部が一緒らしかった。

 同じ部活動をしていたらしい。

 おそらくこれまでは厳しい上下関係が築かれていたのだろう。

 男子が後輩女子を従えていたはずだ。

 その関係が中等部進学で逆転してしまっていた。



「んむううううううううッ♡」



 後輩女子よりもはるかに貧弱な体格の先輩男子が悶えていた。

 彼は今、後輩女子の胸に顔面を押しつけられて、潰されていた。

 制服姿であるのに巨大に発達していることが分かる爆乳にパフパフされているのだ。

 普通だったら悦ぶところなのだろうが、先輩男子にその余裕はなかった。

 さきほどから「バギバギッ♡」と先輩男子の頭部が軋んでいた。

 あまりにも強い抱き潰しによって、先輩男子が後輩女子の爆乳で殺されていった。



「ふふっ♡ センパ~イ、抵抗もできないみたいッスね♡」

「むうううううううううッ♡」

「部活中はいっつも視姦してきたウチのおっぱいで潰されてきますねー♡」

「むうううううううううッ♡」

「ほら、もっと抱き潰してやりますよ♡」



 ぎゅううううううううううううううッ♡

 バギベギバギイイイイイイイイイイッ♡



「んむううううううううううううううッ♡」



 後輩女子がさらに先輩男子を抱き潰す。

 両腕で先輩男子の頭部を抱きかかえて、自分の爆乳へと押しつけていく。

 制服ごしにたわわに実った乳肉が、先輩男子の頭部を破壊する凶器へと変わっていた。

 男子の顔面が乳房にめりこみ、さらに限界まで押しつけられ、潰されていく。

 バギバギと骨が軋む音が響いていく。

 体格差がありすぎるせいで、男子の足は地面についていない。

 宙づり状態のパフパフで男子が爆乳によって殺されていった。



「ぷぷっ、ザコすぎ~♡」



 後輩女子が爆乳で先輩男子を殺しながら、



「つーか、こいつのことなんて、もう先輩扱いしなくていいんだよね♡」

「むうううううううううううッ♡」

「中等部にあがったんだもん。ウチが上で、こいつが下。当然だよね、ウチは女で、おまえは男なんだから」

「むうううううううううううッ♡」

「これからは、おまえがウチに敬語で喋れよ?」

「むうううううううううううううううううッ♡」

「さんざんにコキつかってやるからな、勇人」



 ぎゅうううううううううッ♡

 ベギバギイイイイイイイッ♡



 格付けが終わって、さらなる蹂躙は続く。

 後輩女子があらたな支配者となり、かつて先輩だった貧弱男子を痛めつけていく。

 爆乳が獲物を捕らえてはなさず、さらに生き埋めにして、地獄を味あわせていった。



 ●●●



「ひゃだあああああッ」

「た、たじゅげでえッ」

「ひゃめでええええッ」

「うわああああああッ」



 男子たちの悲鳴だけが体育館に響いていく。

 体育館の中で例外なく地獄が展開されている。



 ―――馬乗りになられてマウントポジションで殴られていく男子。

 ―――片手で首を絞められ宙づりにされながら足をパタパタさせていく男子。

 ―――太ももで挟み潰され顔を鬱血とさせ悶え苦しんでいく男子。

 ―――床に倒れてそれでも許されずに何度も踏み潰されていく男子。



 ありとあらゆる方法で男子たちが痛めつけられていく。

 それを施す女子たちは、ただただ―――、



「うわっ、こいつ、泣きだしちゃった~」

「絶対に許しませんよ。泣いて命乞いしても無駄です」

「無駄無駄~、チビ男子がウチらに勝てるわけないっしょ?」

「それで全力なんですか? もっと抵抗しなさい」

「あー、さいこ~」



 ニンマリと笑って、

 冷酷に睨みつけて、

 女子たちが男子を虐めていく。

 高身長で体格の良い少女たち―――発育が良くて、例外なく容姿の整った少女たちが、チビで不細工で汚らしい男子たちを暴力で圧倒していく。俺は圧倒されてしまった。



(に、逃げないと)



 でもどこへ?

 体育館中で蹂躙は続いているのだ。

 逃げ場なんてどこにもない。

 けれどここにいたらダメだ。

 俺はガクガクと震える足を動かそうと必死に努力する。

 ぎゃああああああっという悲鳴をあげながら男子の体が飛んできて、俺の足下を転がりながら吹っ飛んでいく。反射的な恐怖で逃げようとした俺の前に絶望が現れた。



「にーに、おまえの相手はあーしだよ」



 カナタだ。

 俺よりもはるかに成長してしまった妹。

 仁王立ちになったカナタが、俺の前に立ち塞がってきた。



 *



「あ-、我慢もようやく終わるのか~」



 カナタが歩いてくる。

 制服を着崩して谷間を露出させているせいで、歩くたびにおっぱいが揺れている。極限まで短い丈のスカートからは、野生動物みたいな筋肉質な脚が躍動していた。



「ふふっ♡ にーに♡」



 カナタの歩みが止まった。

 俺の目の前―――両手を腰にやって仁王立ちした妹が、チビで矮小な兄のことを見下ろしてきた。



「あーし、今までは我慢してたんだかんね」

「ひ♡」

「我慢、してたんだから」



 がしっ♡



 有無を言わさぬ力強さで、カナタが両手で俺の腕をつかんできた。

 両手首がわし掴みにされて、カナタの手の大きさにビクンと震える。そのまま両腕を持ち上げられて、俺は万歳の格好にさせられてしまった。見上げると、そこには鼻息を荒くして興奮する妹が、怪しげに輝く瞳でこちらを見下ろしてきていた。



「んふっ♡」



 いつもの人を小馬鹿にしたような笑みではない。

 興奮した人間が腹の底から浮かべるような笑顔だ。自分の知っている妹ではない。まるで別人だった。興奮した長身女性から性的な視線で見下ろされて、俺の背筋も「ぞくぞく♡」した。



「か、カナタ・・・・・い、痛い・・・・・・」



 万歳させられた俺は両手首の痛みで悶えるしかない。

 こんなにも暴力的に振る舞う妹は初めてで、やはり恐怖を感じた。その力強さは信じられないほどだった。激痛で顔が歪み、思わず呻き声が漏れてしまう。



「ふふっ」



 そんな俺を見下ろして、カナタが満足気に笑った。

 さらに興奮が増しているのが分かる。じいいいいいっと凝視されて見下ろされる。俺の両手首をわし掴みにしてくる強さも増した。骨にまで響くような激痛で「ひい」と声が漏れ、ますます妹を興奮させてしまった。



「あはっ、ほら高い高~い」



 ぐいっ!



 カナタの強靭な肉体が躍動する。

 両手が引っ張りあげられて、俺の体が宙に浮く。持ち上げられて、俺の足が地面から離れてブラブラと宙づりになってしまった。目の前―――同じ視線の高さになった妹からじっくり見つめられる。



「チビ♡」

「う」

「にーにはチビだね」

「あ」

「小さい頃はにーにの方が大きかったのに、もうこんなに身長が違う。身長だけじゃないか。ぷぷっ、にーにの体、モヤシみたいに細くて笑っちゃうね」



 ニヤニヤと見つめられる。

 その言葉どおりに俺の体は妹よりも貧弱でみすぼらしかった。

 目の前には巨木みたいにどっしりとしたカナタの肉体がある。そんな圧倒的な女体に両手首をわし掴みにされて、持ち上げられ、宙づりにされてしまっていると思うと生きた心地がしなかった。足をブラブラさせながら、悶えるしかない。



「さっきまでの話し、聞いてたよな?」



 カナタがニンマリ笑いながら言う。



「にーにのことは、妹であるあーしが、責任をもって調教する」

「か、カナタ?」

「立派な家畜になれるように厳しく指導してやんよ。嬉しいか?」

「な、なに言って、」

「あ~? まだ分からねえの?」



 不機嫌そうな顔で睨まれ背筋が凍ってしまう。

 さきほど奈津実ちゃんから説明されたこと。

 そして体育館で繰り広げられる女子たちによる蹂躙。

 それでも俺は実感として現実を受け入れることができないでいた。どこか遠く自分とは関係のない物語を聞かされている気分。女子が男子より強いとか。女子が男子を調教するとか。そんな現実離れしたこと、夢物語にしか思えなかった。



「しゃーない、まずは現実を分からせてやるか」



 *



 力比べしようよ、にーに。



 宙づりにされていた俺の体が地面におろされる。

 さきほどまで同じ高さの視線だったのが一変し、見下ろされる。

 ニヤニヤと猫みたいな笑顔が恐ろしい。

 そのままカナタが俺の手を掴み―――指を絡ませてきた。指の間と間にカナタの指が挿入されて、がっちりと固定されてしまう。まるで恋人同士の手のつなぎ方だ。両手がカナタの大きな手によって捕獲されてしまった。そして、



「全力出さないと、手首ぶっ壊れっかんな?」



 ぎゅううううううううううッ!



「い!?」



 唐突にカナタの手に力がこもった。

 恋人繋ぎさせられた両手が巨大で無慈悲な機械に巻き込まれてしまう。手首が折り曲がり激痛が走る。両手をぐいっと持ち上げられ、万歳をさせられながら力比べが始まってしまった。



「い、痛い! や、やめろカナタ!」

「やめな~い」

「や、やめ・・・・やめて・・・・」



 痛い。

 手首の可動域が限界をむかえているのが分かる。

 耐えられなくて必死に抵抗しようとする。両手に力をこめてカナタの両手を握り返そうと、



(び、びくともしない!?)



 力の差があり過ぎるのだ。

 俺がどんなに全力で力をこめても、カナタの手の力には敵わない。まったく相手にされていないのが分かる。俺の抵抗なんて問題にすることなく、カナタの長くて美しい指が絡みついてきて、握り潰され、手首関節を軋まされていった。



「ぷぷっ、ぜんぜん力ないな、にーに」

「う、ひいいッ」

「体もチビで力も貧弱。惨めだな」

「うああああッ」

「ほれほれ、妹に力で負けちゃうぞ? 年下の女に力で負けちゃう。悔しくないのか、おまえ?」



 煽られる。

 ニヤニヤと見下ろされて鑑賞される。

 その視線に耐えきれずに俺は全身全霊を振り絞って両手に力をこめた。兄の威厳。男のプライド。顔を真っ赤にして、歯を食いしばって、全力で押し返そうとする。



「はっ、それで全力~?」



 しかしやはり無駄だった。

 俺がどんなに力をこめても、カナタは表情一つ変えずに押し返してくる。ニヤニヤと笑った顔はカナタがまだ本気を出していないことを教えてくる。余裕で、手加減をして、兄の力を圧倒してしまっているのだ。その事実と、目の前の巨大な妹の肉体を前にして、心が折れそうになる。



「ふっ、いくぞ?」



 ぎゅううううううううううううッ!



 さらに強烈な握り潰し。

 カナタの長くて美しい指が一匹一匹の大蛇みたいに俺の手に巻きついてきて、締めあげてくる。手首がそりかえる。神経を直接いたぶられているような激痛が雷に打たれたみたいに全身を駆け抜けた。



「い、痛い痛い痛いッ!」



 叫ぶ。

 思わず逃げようとして、その試みが無駄であると分からされる。俺の両手は頭上で拘束され、握り潰されているので、逃げることなんてできないのだ。奴隷みたいに繋がれてしまっている。妹の両腕によって、俺という体が拘束されていた。



「ひゃ、ひゃめでええッ! カナタッ! もうムリだからああッ!」



 頭上を見上げながら許しを乞う。

 目の前の着崩した制服からこぼれる爆乳の上―――そこでニヤニヤと俺のことを見下ろす妹を見上げながら、必死に、



「も、もうやめてくれ! お願いだから!」

「・・・・・・・・・・・・」

「ゆるして! あ、あ、あ、あ、力こめるな!」

「・・・・・・・・・・・・」

「ひゃめでえええッ! ひゃめでよおおおおッ」

「・・・・・・・・・・・・」



 懇願が無視される。

 カナタはただじいっと俺のことを見下ろすだけ。その頬が赤くなっていき、妹が興奮していることが分かった。



「あー、やっぱいいわ~」



 カナタが俺を凝視しながら続ける。



「あの強かったにーにを・・・・・・憧れだったにーにをボコしてるって思うと・・・・・満たされてく・・・・・・」



 独り言のように、

 俺という人間が目の前にいないかのように、



「これからコレ自由に使っていいんだ・・・・・・・あんなこともこんなこともできる・・・・・・・・ぜんぶやる・・・・・・・ぜんぶ・・・・・・・ぜんぶ・・・・・・・」



 怖い。

 成熟した女性の性的な視線に恐れをなす。

 鑑賞物にさせられ、暴力でも圧倒されてしまう。なすすべもなく、俺にできるのはその視線に耐えることだけ。猫みたいなクリクリした瞳―――これまでも日常的に目をあわせてきた瞳なのに、性的欲望で輝いたその視線は、まるで別人みたいに思えた。



「ひゃ、ひゃめでえええええッ」



 泣き叫ぶ。

 手首は限界を越えて反らされている。

 激痛で自然と涙が落ちていく。

 それがまたしても妹の興奮を誘ってしまい、さらに力がこめられ、激痛でおかしくなりそう。俺の手首が壊されていく。



(な、なんとかしないと)



 手首の可動域を確保しないと壊される。

 手首の関節がバギバギに破壊されてしまう。

 俺はなんとか手首の可動域を確保しようと、両手を下げようとした。けれども妹の力の前では無力で、俺の両手は万歳をさせられたまま頭上で固定化されてしまい、少しも両手を下げることができなかった。



(だ、ダメだ♡ ぜんぜんビクともしない♡)



 絶望で背筋が凍る。

 それでも激痛をなんとかしなければならない。



「ひいいいいっ!」



 俺はカナタの巨体に身を預けるみたいに倒れこんだ。

 手首の可動域を少しでも確保するために膝を折り、床に倒れこんで妹の肉体に密着しようとした。しかし、



「きゃはっ、なにしてんの、にーに」



 無駄だった。

 それだけ力に差があるのだ。

 万歳の格好を強制され、床に倒れ込むこともできずに、妹に持ち上げられてしまっている。可動域を確保できなかった手首が破壊されていく。バギバギと嫌な音が手首から響いてきて、絶叫した。



「ひいいいいんんんんんんッ!」

「あはっ、ギャン泣き乙~」

「ひゃめでえええええええッ!」

「本気の悲鳴いただきましたー、きもち~」

「ゆるじでえええええええッ!」

「うわっ、その泣き顔やばいんだけど。もっと見せろよ」



 ぎゅうううううううッ!



 力が増す。

 手首が折られる。

 抵抗しても無駄。

 俺よりも妹の力のほうが強い。

 純粋な力の強さで完敗してしまっている。

 それが分かった。



「これで分かったか?」

「ひいいいいいいッ!」

「にーにより、あーしの方が力が強いんだよ」

「ひゃだああああッ!」

「兄より妹のほうが強い」

「ゆるじでえええッ!」

「男は女に勝てないの、分かったか?」



 じいいっとした視線。

 それに耐えきれず、



「分かったからあああッ! 男子は女子に力で勝てないの分かったからあああッ! だから許しでええええッ!」



 心の底からの絶叫。

 手首を破壊されたくなくて、両手を万歳の状態で宙づりにされながら命乞いする。ニンマリとした瞳が俺のことを見下ろしてくる。鑑賞の時間が過ぎ、満足したのか、カナタが、



「よし」



 一言つぶやき、俺のことを解放した。

 俺の体が落下して床に倒れる。解放されたのに激痛が終わらない。体を丸めさせて、両手を抱えるように守りながら、痛みに悶え苦しむしかなかった。



(た、たすかった)



 あれ以上やられていたら本当に手首が壊されていた。

 助かったという安心感でホっとする。

 しかし悪魔のような妹がこれで満足するわけなかった。



「まだだよ、にーに」



 *



 その声に震える。

 横向きに床に倒れて、ビクビクしながら見上げる。

 長身女性が仁王立ちで俺のことを見下ろしていた。



「最初が肝心だかんなー。まだまだやるぞ?」

「ゆるじで・・・・・もうひゃめで・・・・」

「だめだめ。おら、はやく立てよ」



 見下ろされる。

 圧倒的な巨体の持ち主―――男の俺よりも強大な力を有した妹からニンマリと見下ろされて生きた心地がしない。俺にできるのは「ゆるして」と哀願することだけだった。



「おら、立て」



 どすんっ!



 踏まれる。

 激痛で「ぐげええっ!」と悶絶した。

 ミニスカートから伸びるムチムチかつ筋肉質な脚が破壊の限りを尽くしていく。

 長い美脚が折り曲げられ、次の瞬間には踏み潰しが実行される。上履きを着用した大きな足裏が無慈悲に俺の体を踏んでいく。横向きに倒れた俺の体に美脚による絨毯爆撃が降りそそぎ、虫けらみたいに踏み潰されていった。



「ゆるじでッ! ひゃめでッ!」



 大きな足裏でぺちゃんこにされながら叫ぶ。

 踏み潰されていない時間を使った命乞い。

 それでも許されず、それどころか俺の命乞いに興奮してしまった妹が、ますます踏み潰しの力を強くしてしまった。



 ぐじゃあッ!

 べぎいいッ!

 ぼっごおッ!



 潰されていく。

 ぺっちゃんこにされちゃうッ♡

 妹に―――年下の女子に―――なすすべもなく踏まれ、踏まれ、踏まれていく。



「おらっ」



 ぐじゃああああああッ!



 最後に強烈な踏み潰しが俺の頭部を踏みつけにした。

 横向きに倒れた俺の側頭部が、カナタの大きな足裏で踏み潰される。そのままグリグリと踏みにじられる。頬に食い込んでくる上履きのゴムの感触が屈辱感をさらに高めていた。



「ぷぷっ、踏み潰されて、立てもしないんだな」



 ぐりぐりと右脚で踏みつけながらカナタが言う。

 右腕を右膝に乗せ、前かがみになって体重をかけながら、妹が俺のことを鑑賞していった。



「虫けらみたいだな、にーに」

「うっぐうううッ!」

「妹に踏み潰されて泣きじゃくってる」

「ううううううッ!」

「弱いって惨めだね。受ける(笑)」



 ぐりぐりぐりッ!



 潰される。

 頬に上履きのゴムが食い込んできて、地面に押しつけられる。頭蓋骨が軋み、首の骨が折れるんじゃないかと心配になる。その恐怖で体が半狂乱になって暴れるのだが、やはり無駄。頭部を踏み潰されて、地面に縫いつけにされてしまった。



「しゃーない。おっぱいで虐めてやろうと思ってたけど、計画変更すっか」



 踏み潰しが終わる。

 仁王立ちになったカナタが俺のことを見下ろしながら、



「ほら、見ろよ、にーに」

「ひいッ」

「あーしの太もも、ちゃんと見ろ」



 美脚が強調される。

 見せつけられて、驚愕した。



(しゅ、しゅごいいいいッ!)



 まじまじと見つめた太ももの迫力。

 その生命力の塊みたいな脚を前にして、意識が奪われてしまうのを感じた。

 ムチムチしていながら、張りがあって、肉食動物の皮膚みたいな美脚。その生々しい脚は、さきほどまで俺の体を踏み潰していた恐ろしい存在なのだ。妖艶なエロい美脚が男である俺を圧倒してしまうほどの恐ろしさを兼ね備えていると思うと、ますますカナタの太ももが魅力的に見えた。



「ぷぷっ、凝視してるな?」



 ニヤニヤとカナタが笑いながら、



「いっつも、あーしの太ももチラ見してたもんな?」

「うううッ」

「今からこの脚で、おまえのことを潰す」

「ひいいッ」

「覚悟しろよ、にーに」



 死刑宣告をされたのに逃げられない。

 エロくて魅力的な美脚から目が離せなかった。

 ある意味、蛇に睨まれたカエル状態になってしまった俺は、またたく間に大蛇のような太ももによって捕食された。



「ほい、太もも胴締めの完成~」



 おどけたようにカナタが言う。

 まるで遊び半分だった。

 その巨尻で床に座り、長い美脚を惜しげもなく伸ばして、そのムチムチ太ももで背後から俺の胴体を挟み潰してしまっている。胴体だけではない。カナタはその自慢の太ももで、俺の両腕ごと挟んでしまっていた。



 ミチミチミチミチッ♡



「あ、あ、あ、ひいいいいいッ!」



 太ももに挟まれ、自分の両腕が胴体にぴったりと密着してしまっている。

 背中にはカナタの爆乳の感触が「ぐんにゃり♡」と伝わってくる。

 凄まじい圧迫感で両腕ごと胴体が軋んでいるのが分かる。ムッチリとしていながら筋肉質な極太の太ももが、獲物である俺という体を捕食し、挟みつけているのだ。両サイドに食い込んでくる太もも肉の圧迫に、ただただ怯えるしかない。



「おいおい、まだ締めつけてないのに怯えすぎじゃね?」

「や、やめ、やめで、」

「やめるわけねえだろうが。いいか? 今からお前の胴体を潰す。あーしの太ももで挟みあげてバギバギにへし折ってやるんだよ。必死に抵抗しないと、にーにの背骨も太ももで折り曲げてやるからな?」



 背後からの声に背筋が凍る。

 後ろを振り返らなくても、カナタがニンマリと笑っているのが分かった。助けて欲しくて、やめて欲しくて、俺は再び命乞いを、



「ほい♪」



 ぎゅううううううううううううッ!

 ベギバギベッギイイッ!



「ぎゃあああああああああああああッ!!??」



 ひとたまりもなかった。

 凶悪太ももが俺の体を潰してしまった。

 代謝が良くてみずみずしい太ももと太ももが、お互いに密着してしまうほどの強烈な締めつけ。

 ただでさえ極太の太ももが筋肉で隆起してさらに体積を増してしまっている。巨大なアナコンダに締めつけられてもこうはならないのではないかという巻きつき。俺の胴体よりもデカい太ももでなすすべもなく締めつけられていった。



「ひゃだあああああッ! ひゃめでええええッ!」



 半狂乱になって暴れる。

 両腕が胴体に食い込んで、さらに潰されていく。カナタの太ももの形にあわせて俺の体が「べこんッ♡」とへこんでいるのが分かる。さきほどから息ができなくて酸欠の恐怖でも暴れる。命をかけた抵抗で俺の体が痙攣まじりの抵抗を試みていく。しかし、



「きゃはっ、あー暴れてる暴れてる。虫みたい(笑)」



 妹を楽しませるだけで終わってしまった。

 後ろに手をついて上半身を倒し、リラックスしながら兄である俺を挟み潰していくカナタ。自室でくつろいでいるようにしか見えないのに、その貪欲な太ももは俺の胴体を丸ごと捕食して消化してしまっている。バギバギと俺の骨が軋む音を間近で聞かされ、発狂しそうになった。



(逃げないと・・・・・逃げないと・・・・・)



 それが分かっていてもどうしようもない。

 カナタの太ももは俺の両腕ごと挟み潰してしまっているので、俺にできることといったらたかが知れていた。全身をバネのようにして暴れても無駄だ。大蛇のような太ももは簡単に俺の胴体を喰い潰し、バギバギと軋ませにかかっている。捕食した獲物の骨を折って食べやすいようにしているのだ。



「おらおら、両腕でふんばって太ももから脱出してみろよ」

「かぎゅうううううッ!」

「両腕でふんばって太ももプレスを止めないと、このままじゃ、にーに、死ぬぞ? 妹の太ももで圧殺されちゃう。それが嫌なら全力で抵抗しろよ」



 妹の言葉に絶望して全力を出す。

 両腕に全身全霊の力をこめてカナタの太ももに抵抗しようとする。少なくとも息が吸えるだけのスペースを確保するために、太ももと太ももを押し広げようと、必死に力をこめる。しかし、



(び、ビクともしない!?)



 1ミリだって太ももを動かすことはできなかった。

 俺は顔を鬱血させて、奥歯が欠けるくらいに歯を食いしばって両腕に力をこめているのに、太ももを動かすどころか、そのプレスの力を和らげることすらできないのだ。俺の胴体は変わらずに妹の太ももによってぺちゃんこにされ、息がまったくできない。ミニスカートから伸びる生足の太ももと太ももによって隙間なく密着され、挟み潰され、その強靱な凶悪太ももによって内臓を痛めつけられていく。



(勝てない・・・・・・妹の力に・・・・・勝てない・・・・・)



 分からされる。

 妹よりも力が弱いということ。

 その肉体的な性能で完敗しているということを分からされてしまう。

 この入学式を迎える前までは、日常的にチラ見していた太もも。妖艶で生々しい妹の生足によって挟み潰され、殺されていく絶望感。両腕と胴体だけでなく矮小な俺の体全体が太ももによって潰されていくような錯覚に陥り、すぐに俺は諦めてしまった。



(たじゅげで・・・・たじゅげで・・・・・)



 白目をむいて脱力する。

 口を大きくあけてパクパクと空気を求めて無駄な努力をする。

 胴体が「ぺちゃんこ♡」にされているので空気を吸うことも吐くこともできない。それでも生きるために口がパクパクと動いて空気を求めているのが滑稽だった。断末魔の叫びみたいに顔を絶望させて、妹の太ももの中で悶え苦しんでいく。



「きゃはっ、にーに、もう諦めたのか?」

「かひゅ―――かひゅう―――」

「うわっ、もう虫の息じゃん。どんだけザコなん?」

「ヒュウウウッ―――かひゅうッ―――」

「ふっ、その情けないツラ、もっと見せろよ」



 太ももの締めつけが緩む。

 カナタの大きな両手が俺の貧弱な腰がつかんだかと思うと、ぐるりっと180度回転させられた。背後からの絞めつけから真正面で向かいあう格好で拘束される―――その瞬間、再び大蛇のような太ももが俺の胴体を喰らった。



 ばっっちいいいんッ!



「ぐえええええええええええええッ!?」



 太もも同士がミチミチと潰し合う。

 俺の胴体よりも太い肉と肉に挟まれたチビ男の体なんてひとたまりもない。妹と向かい合った状態で潰された。俺のことをニヤニヤしながら見下ろしてくる妹の瞳が恐ろしくて仕方なかった。



「うわっ、マジでエロいな、にーにのギャン泣き顔」

「かぎゅう―――カヒュウウッ―――」

「虫の息なのもポイント高い。やばっ、興奮してきた」

「かひゅうッ―――かひゅうう―――」

「あー、これから毎日コレが堪能できると思うとはかどるわ~。あーし、にーにの妹でマジでよかった~。同級生でクラスメイトになって調教できるとか、役満だろ」



 ぎゅうううッ!

 ギュッ! ギュッ!

 ぎゅっ! ぎゅッ!



 べぎばぎっばっぎいいいいいいッ!



 カナタが強弱をつけながら遊び始める。

 そのたびに俺の胴体は妹の生足に潰され、内臓が口からこぼれてしまうのではないかという恐怖で泣きじゃくっていく。この太ももには勝てない。それを教え込まされていった。



「こうやって、女の体を強調できる部位で痛めつけるのが、調教としては効果的なんよね~」



 俺の泣き叫ぶ姿を鑑賞しながら妹が続ける。



「にーにがチラ見してきた脚でイジメ抜いて、もうこれからあーしの太ももを性的な目で見ることもできないほど恐怖を植え付けてやるからな? 覚悟しろ?」



 *



 締めつけられていく。

 どれほど時間が経過したかは分からない。

 俺は妹の太ももで挟み潰されたまま、一度も解放されることなく、永遠に締めつけられていった。少しだけ緩められた太ももの間で、かろうじて気絶しない程度の息継ぎを許され、またしても締めつけられて遊ばれる。妹の満面の笑みが恐ろしい。それよりも何よりも恐ろしいのは、この拷問が俺だけではないことだった。



(みんな・・・・・・みんな壊されていく・・・・・・)



 周囲では地獄が展開されていた。

 体育館では俺と同じように―――いや、俺よりもさらに残酷な方法で処刑されていく男子が大勢いた。



 殴られて顔の原形が留まっていない者。

 何度も何度も気絶して壊れた笑顔を浮かべているだけの者。

 命乞いのしすぎで喉が枯れて声が出せないのに、長身女子から「もう命乞いしなくていいの?」と理不尽に問いかけられ、絶望したまま締めつけられている者。



 男子という男子が、

 2歳年下の女子たちによって、

 徹底的に痛めつけられ、調教されていた。



(勝てない・・・・・俺たち男子は勝てないんだ・・・・・)



 それを分からされた。

 骨の髄まで理解した。

 俺たちは勝てない。

 女子には勝てない。

 勝てない♡



(勝てない♡・・・・・勝てない♡・・・・・カナタのほうが強い♡)



 力で勝利することは絶対に不可能だ。

 ひょっとしたら、ボクシングの技術とか、そういった勝負ならまだ戦いになるかもしれない。

 けれど、純粋な身体能力という点においては、男子は女子に勝てないことを分からされた。

 現実が覆る。

 これまで生きてきた世界が消えてなくなる。

 俺たちよりも強い女子たち。

 その客観的事実が俺の脳髄に刻まれたことが分かった。



「おら、よそ見してる余裕ねえだろ?」



 カナタの手が伸びてきて俺の下顎にそえられ、くいっと上を向かされる。

 その間も太ももの締めつけは継続。

 俺は一瞬にして白目をむいて、ボロボロと涙をこぼし続けるしかなかった。



「これで分かったよな? 男子は女子より弱いんだよ」

「おええッ♡ ぐええッ♡」

「かわいそうにな。男に生まれてきたお前らが悪いよな」

「ぐええッ♡ かぎゅう♡」

「よしよし。完全屈服できて偉いぞ。ご褒美に、締めつけて気絶させてやるからな」



 ようやく許される。

 気絶させてやるという言葉を受けて脳裏に浮かんだのが「これで助かる」という安堵だった。俺は絞め落とされるのを心待ちにして、全身を脱力させ、ボロボロとうれし涙をこぼしてしまった。



「ふっ、優しい妹をもって、にーには幸せ者だよな?」



 笑って、



「よし、墜ちろ」



 ぎゅううううううううううううッ♡



 締めつけ。

 体が自動的に痙攣し、ガクガクと振動していく。

 神経締めされた魚みたいに脊髄反射で筋肉を痙攣させていく。

 それほどまでに妹の太ももの威力は凄まじかった。

 すぐに完全な白目をむき、目の前が真っ暗になっていった。



(カナタ・・・・・カナタ様♡・・・・・・)



 意識が消える。

 その瞬間、



「ふふっ、記念すべき1回目っと。これからよろしくな、にーに」



 嬉しそうに、

 カナタがつぶやくのが聞こえた。




つづく