どれくらいの時間が経過したか分からなかった。
おぼろげながら、ひたすら何時間も足を舐め続けたこと。その間に千鶴から厳しく叱責されたこと。何度かビンタをされて地面に倒れ込んだことは覚えている。
その他のことはさらに記憶があいまいになっている。
たとえば、千鶴と一緒に風呂に入ったこと。
体を洗われたこと。
彼女の大きな胸が自分の背中を潰す感触。
トロンとした瞳を浮かべた彼女がディープキスで何時間も自分の口内を犯していたのではないかという夢みたいにおぼろげな記憶。
ベットの中で千鶴と共に眠り、抱き枕にされているときの苦痛と快楽。
それらが夢とも今までの調教の記憶ともついさっき起こった出来事ともとらえられるような曖昧模糊とした感覚として町田の中には残っていた。
意識が覚醒したのは朝だった。
自分が横たわっていることにまずは気づいた。
床の上ではない。背中には柔らかい布団の感触があり、かけ布団もかけられている。ベットの中だ。
それを認識するのと同時に、自分の体が二つに分裂しているという訳の分からない感覚に陥った。
自分の左側にとても柔らかくて熱い体がもう一つあるのを感じていた。なんだろうこれはと寝ぼけ眼で考えたのは一瞬のことで、千鶴様に抱き枕にされていることに気づくと、冷たい水を全身に浴びたかのような寒気を感じた。
「あ、起きたんだね、弘樹くん」
千鶴の声が耳元でした。
そちらを振り向くと、千鶴がその大きな瞳をぱっちりとあけて、こちらを見つめていた。その顔には微笑みがあった。
「ごめんね、昨日の夜はちょっとやりすぎたみたい」
千鶴が言った。
申し訳なさそうにしていて、その様子だけからも千鶴が謝罪をしていることが分かった。
「弘樹くんは、彩ちゃんと優ちゃんの調教に耐えたのにね。ちょっと嫉妬しちゃったんだよね」
「ち、千鶴様」
「ふふっ、まあ、今日は私の家でゆっくりしておいてよ。野球部の夏合宿の最終日って今日だったよね」
「は、はい。そうですけど」
「そっちもきちんとやっておくからさ。あと、彩ちゃんと優ちゃんとも今日中には話しをつけておくよ。いつまでも喧嘩しているわけにはいかないからね」
そう言って、千鶴が頭を撫で始めた。
慈愛をもった優しげな手つき。
その感触がどこまでも心地よかった。
町田は夢心地になりながら、千鶴の愛撫をいつまでも受けていたいと切に希望していた。ご主人様の苛烈な調教を受けたことによって、千鶴に対する畏敬の念が増すと共に、彼女に対する恋心も格段に増す結果になった。
身も心も千鶴に心酔した町田は、トロンと溶けた表情を浮かべながら、飼い主である同級生の女の子にいつまでも撫でられ続けていった。
*
部活から帰ってきた千鶴に見送られて、町田は自宅へと帰宅することになった。
3週間ぶりの我が家だった。
町田は久しぶりに顔をあわせた両親との会話を早々に切り上げると、自室のベットに横たわりながら、壮絶な3週間のことを思い出していた。
あれからまだ3週間しか経っていないというのは信じられないくらいだった。
野球部をクビになって、夏合宿に参加することができなくなり、行き場をなくしていたあの日。
千鶴に好意に甘え、彼女の家で居候をさせてもらうようになった日々。
千鶴がソフトボールの強化選手に選ばれ、女子ソフト部の部室で寝泊まりをすることになったこと。
その中で彩華の暴力に調教され、優子の性技に溶かされてしまったこと。
この全てが、わずか3週間の間におこったことだということが、町田自身信じられなかった。もうかれこれ、1、2年くらいの年数が経過しているように感じられた。
それだけのことがあった。
自分の人生も決定的に変わった。
今の自分は千鶴様の奴隷である。同級生の女の子の下僕として、今後は生きていく。そのことに甘んじるつもりはなかったが、屈辱というよりも陶酔の気持ちのほうが強かった。
千鶴様にご奉仕したい。
彼女のために自分の全てを使いたい。
そんな気持ちが町田の全身を支配していた。
(でも、明日は何があるんだろう)
町田は、さきほどの別れ際に千鶴に言われた言葉を思い出していた。
荷物をまとめた町田にむかって、千鶴はこう切り出したのだった。
「明日、午前11時に部室にきてくれる?」
「え、部室って、女子ソフト部のですか?」
「そうそう。あ、彩ちゃんと優ちゃんにはきつく言っておいたから安心していいよ。もう弘樹くんに手を出さないと思うから」
千鶴はにっこりと笑顔で言った。
その迫力がどことなく恐ろしいもののように見えて、町田は沈黙するしかなかった。
「まあ、11時までかからないとは思うけどね。それくらいには確実に終わってると思うから、時間に遅れないように来てね」
その言葉を最後に、千鶴と町田は別れた。
町田を呼び出した目的がなんなのか、最後まで千鶴は教えてくれなかった。
しかし、ご主人様の命令は絶対である。町田としては文句もなく、千鶴の命令どおり、明日は女子ソフト部の部室に行くことを決めていた。
そこで行われることに最後まで気づかないまま、町田は久しぶりの自室で眠りについた。
つづく