ふー、と息をつく。
 
 シエスタと一緒に昼メシを食べることになったのがつい先ほど。

 そして今ようやく、シエスタの作ってくれたサンドイッチを食べ終わったところだった。

 場所はルイズの部屋であり、俺はせっかく一緒に食べるんだからもっと他の場所にしようと言ったのだが、シエスタは「ここがいいんです」と変に頑固に譲らなかった。

 そのシエスタは今、食後の紅茶なんかをいれてくれている。

 あまり大きくもないが狭くもないというルイズの部屋には、さきほどから春の陽気が立ちこめ、なんだかゆったりとした空気が流れていた。

 それでも昼メシを食わせてもらっておいてシエスタを退屈させるわけにはいかないと思い、俺はさきほどからなんとか話題を見つけてシエスタに話しかけている。


 とは言っても、こっちの世界に来てからさほど時間も経っておらず、共通の話題といってもなかなか見つからない。

 おもしろい話をなんとかひねくりだそうとするのだが、しかし毎日のようにルイズの奴にコキ使われている現状ではそんなことはまったく思い浮かばなかった。


 結果として俺がシエスタに話すのは、ルイズがどんなお仕置きをしてくるのか、というなんとも情けない話しになった。

 人の不幸ほど面白いものはないだろうし、ルイズの俺に対する仕打ちは学園内でも話題になっていたので、シエスタも面白く聞いてくれると思ったのである。


「……でさ、その時も必死になって謝ってるっていうのに、ルイズの奴なにしてきたと思う? 人間椅子だよ人間椅子。四つん這いになれって命令してきて、容赦なく背中に乗ってくるんだよあいつ。んでもって宿題が終わるまでそのままでいなさいって2時間だぜ? ずーとそのままの状態でさ。ホント、脚とかなんとか痛いのって」


「ふふふ、大変ですねサイトさんは」


 さきほどからシエスタは、俺の言葉に微笑みを浮かべて、楽しげにしていた。

 どうやら楽しんでもらえて、俺もこんな情けない話をしたかいがあるというものだ。

 シエスタの格好は、いつものようにメイド服。

 メイドといっても元の世界にあったメイド喫茶のような派手なものではなく、それは機能性だけを重視したそっけないものだった。

 そんなメイドというよりは家政婦というものを連想したほうが早い服に身を包んでいても、シエスタの美貌はまったく曇らないのだから不思議だ。

 その服と同じように派手さというものはないのだが、そこには清純派を名乗るにふさわしい可憐な姿がそこにあった。


 それになんだか今日のシエスタのメイド服はいつものと違う気がする。

 いつもならばゆったりと少し余裕をもった着こなしなのだが、今日のメイド服はなんだか小さいような気がするのだ。

 着痩せはするが巨乳であることが立証されているその胸は、その小さなメイド服にあいまってその大きさを強調するにいたっている。

 さらには、スカートのたけもいつもよりも段違いに短い。

 その結果として、シエスタの姿はいつもよりも色っぽく。スカートから伸びる真っ白な脚線美や、ムチムチとした大きな胸を見るにつけて少しだけ顔が赤くなるのを感じた。


 い、いかん。いかん。せっかくシエスタが好意で昼飯を作ってきてくれたというのに、そんな目でみたらまずいだろう。


 そんなふうに自分で自分のことを律しようとはするのだが、しかし目は自然とシエスタの脚や胸にいってしまう。

 まああれだな。綺麗なものはしかたないというか。逆に見ないと失礼にあたるかもしれないしな。


 俺は、うんうんと頷きながらチラチラとシエスタの体を盗み見る。

 と、いきなりシエスタがこちらを向き直り、


「でも、本当に嫌なんですか?」

「え? な、なにがだ? シエスタ」


 バレたか?

 俺がシエスタの体を欲情の眼差してみつめていたのがばれてしまったのか?

 心臓がバクつき、なんとか言い訳を考えようとするが、しかしそれはどうやら杞憂だったようで、


「ルイズさんのことですよ」

「ルイズ?」


 シエスタの様子を見ていると俺の視線に気付いてはいないようだったが、しかしシエスタの今の言葉はどういう意味だろう。

 なぜここでルイズがでてくるんだ?


「なにいってるんだ? シエスタは……ルイズがどうかしたのか?」

「ふふふ、しらばっくれちゃって……じゃあちゃんと言ってあげますね……サイトさんはルイズさんのお仕置きが本当に嫌いなんですか?」

「な!?」


 息を呑む。

 それはその言葉に対してもであったが、それ以上に今のシエスタの表情を見て。

 いつものおっとりとした感じはなりを潜め、なんだか妖艶な、ひどく色っぽい表情を今のシエスタは浮かべていた。

 目は熱をもったようにトロンと俺のことを見てくるし、そこには人のことを虐めて楽しんでいるような、そんなサディスティックな感情がこもっている。


「そんなの嫌に決まってるだろ。誰が好き好んであんな拷問を嬉しがる奴がいるんだ」

「ふふふ、嘘ですよ」


 ピシャリ、と切って捨てるようにそういった。

 心底可笑しいというように笑顔まで浮かべながら、俺の顔をじっと眺めてくる。


「嘘って……なんだよ」

「うふふふ、サイトさんは気付いていないかもしれないですけど、お仕置きされているときのサイトさんってとっても嬉しそうにしているんですよ。それどころか、お仕置きが終わってしまった後は、とても寂しそうな顔で……それが捨てられた犬みたいで可愛くって……」


 シエスタがこちらに近づいてくる。

 その様子に俺は薄気味悪いものを感じた。

 尚もシエスタは妖艶な雰囲気を継続していたし、それがいつものギャップに加えてとんでもない魅力を放っているのだが、それでも何か嫌な予感が俺の第六感に響いたのである。


 俺は「ひっ」という悲鳴とともに、後ろに下がろうとする。

 するのだがしかし、


「な!? 体が動かない!?」

「クス、ようやく効いてきましたね。さきほどのサンドイッチに少々体の自由を奪う薬を混ぜておいたんですよ」


 シエスタは動かない俺を嬉しそうに見つめると、そのまま俺の背後へと回ってきた。

 逃げようにも振り返ろうにも、まったく体が動かない現在の状況。

 後ろに確固たるシエスタの雰囲気を感じて、俺は恐怖を感じた。


「サイトさんが悪いんですからね。あんな顔されたら虐めたくなっちゃうじゃないですか」


 背後から、すっと抱きついてくる。

 シエスタの大きな胸が、俺の背中で潰されることになる。

 耳元ではシエスタの甘い吐息。

 柔らかい、発達した体が俺をつつみこみ、拘束する。


 シエスタは自分の顔を俺の肩に乗せ、耳元で、


「いっぱい虐めてあげますからねサイトさん。泣きながら私の奴隷になるっていうまで許しませんよ」



(続く)