月村の調教は続いた。
毎日毎日。
学校にも行かず、朝から夜まで。
場合によっては眠りながらも、月村は斉藤のことをひたすら責め、調教していった。
「ほ〜ら、これで3割くらいだよ」
月村が片手で斉藤の胸ぐらを掴んで宙づりにし、そのままもう片方の手で永遠と往復ビンタをする。
かれこれ、1時間以上は続いている光景。
月村の手が翻るたびに、ビシンバシンという音と共に、斉藤の顔は左右に大きく振れ、唾液や涙を周囲にまき散らせていた。
「あははっ、すごい顔になったね、斉藤くん」
月村がビンタをやめて、宙づりにした斉藤の顔を真正面から凝視する。
斉藤は顔をパンパンに膨らせて、鬱血したように真っ赤になってしまっていた。
ひゅーひゅーと虫の息で、同級生の女の子に宙づりにされたまま、ビクビク震えている。
「ほら、命乞い」
パン!
言わずともできなかった斉藤を叱責するように、軽めに斉藤の頬をビンタする。
斉藤は「ひいいい」と悲鳴をもらし、半狂乱になりながら言った。
「許してくだしゃああいい!! 陽子しゃまあああ!! どうかお願いしますうう! もうビンタひゃだあああ!!」
必死に叫ぶ斉藤。
その様子を陽子は淡々と見据える。
じっと、その心の奥底まで見通すような透き通った目で、眉目秀麗の才女が、ボコボコになった男を凝視した。
「ふう、まだまだだな〜」
ため息をついた陽子。
彼女は、やれやれといった具合に、男を宙づりにしたまま、もう片方の手を振り上げ、制止した。
いますぐにも、陽子のビンタが炸裂するという手前で止め、斉藤のことを見つめる。
その動作に、恐怖にひきつって言葉も出なくなってしまった斉藤。
その怯えきった様子を見て、内心たぎるものを感じた陽子は、そのまま斉藤の頬をビンタした。
バッシインン!!
音が響き、それが続いていく。
往復ビンタ。
何度も何度も、斉藤の顔が左右に千切れるのではないかと思うほど苛烈な一撃を、陽子は与え続けていく。
続いていく。
陽子の調教は続いていく。
往復ビンタだけではなく、地面に寝そべった斉藤の体と顔をひたすら踏みつぶした。
首四の字固めで、発達した太ももの中に斉藤を拘束し、白目をむいて泡を吹いてもなおも許さず、何度も何度も気絶させた。
関節技練習と称して、頭から首から肩から全身の関節という関節を極め、やめてくださいと必死に頼ませて命乞いをさせても止めず、最終的には骨をはずしてまわったり、
一日中、顔面騎乗。斉藤の顔の上に座って、斉藤の顔面を座布団にし、けっして気絶は許さず息継ぎをさせ、気絶ギリギリの一番苦しいところで10時間以上、自分の尻で斉藤の顔を潰したり、
ありとあらゆる手段でもって、陽子は斉藤のことを虐め、調教していった。
そして、1週間が過ぎた。
*
苛烈な調教。
昨夜もひたすら責め虐められた斉藤は朝を迎えていた。
斉藤にあてがわれた部屋の中。
朝日がカーテン越しにさしこみ、朝のまどろみの中で感じるのは全身の痛みだった。
ここ1週間、学校にも行かず、ひたすら月村に調教される毎日だった。
全身という全身を痛めつけられ、自分と彼女の違いを見せつけられる。
女と男の違い。
その、絶対に越えることのできない性能差。
それをまじまじと見せつけられた斉藤にとって、もはや女性に逆らおうとする気持ちは根こそぎ刈り取られていた。
ただただ、屈服する対象。
許しを乞う対象としての絶対者。
対等なものでは決してない、そんな存在として、斉藤は月村のことを認識するようになっていた。
(でも、なんで今更、陽子様は俺のことをこんなに調教するんだろう)
それが斉藤にとっての疑問だった。
ここ1年間、自分たちが3年生になってからというもの、なにもない毎日だったのだ。
部活動も終わり、クラスの女子生徒としか接点がなくなってからというもの、全く平穏な日々だった。
それまでの調教はなりをひそめ、ただただ平穏な毎日。
陽子との関係も良好で、まるで対等な同級生同士の他愛ない談笑に興じる日常があった。
互いに笑いあい、言葉をかわす親密な関係。
学校に入学して以来、体験したことのない彼女たちとの対等な関係に、斉藤自身、どこか勘違いをするようになってしまっていた。
自分と彼女は同じ存在なのだと。
女と男は対等な存在なのだと。
そんなことを思うほどに思い上がってしまったことを自覚した斉藤は、それでもあの彼女と対等だった日々のことを思いだしてしまっていた。
「やっほー、起きてるかな、斉藤くん」
ドアが開き、月村が現れた。
気さくな、笑顔の似合う女の子だ。
しかし、その優越性は揺るがない。力でも、頭の良さでも、身長でも体格でも、斉藤が月村に勝てる要素はどこにもない。
「・・・・・・・おはようございます、陽子様」
そう答えることに若干の躊躇を見せてしまう斉藤だった。
まだこの女の子と対等でありたいと願っている自分を発見するに、斉藤は自分ながら驚きを禁じ得なかった。
「今日は久しぶりに学校に行くからね」
月村が言った。
気づかなかったが、彼女は制服を着ていた。スカートから伸びる生足がまぶしく感じられた。
「卒業試験も近いしさ。一応、筆記試験もあるんだし、さすがにいつまでも学校に行かないわけにはいかないからね」
「そう、ですか」
「うん。それに、ちょっと仕上げをしないといけないけど、今の斉藤くんなら、試験にも合格できるだろうし」
「?」
疑問の声をあげようとした斉藤だったが、それを遮るように月村が斉藤に制服に着替えるように言う。
月村が見ている前で裸になり、慌ただしく制服に着替え終えた斉藤に対して、彼女が、
「それじゃあ、これ着けようね」
鞄から、首輪を取り出して、そう言った。
その革製の首輪には見覚えがあった。
「奴隷首輪だよ。斉藤くんが、私の奴隷であることの証。公共の場では常に着用が義務づけられるから気をつけてね。学校の帰りに、さっそく役所で奴隷登録もしようね」
「う、あ」
「ほら、斉藤くん、首さげて。つけてあげるから」
首輪を両手でもって、満面の笑みを見せる月村だった。
斉藤に反抗することなんてできるわけがなかった。
彼は無言のまま頭を下げ、月村の前で深くおじぎをするような格好となった。
月村は嬉しそうに、首輪を斉藤の首にまいて、装着した。
「うん、よく似合ってるよ」
月村が言う。
斉藤は自分の首にはめこまれた首輪の感触に違和感を感じていた。
喉が締め付けられたような感覚が常にあって、どこか息苦しさすら感じられる。
まるで、月村にずっと首を絞められているかのような、そんな感じさえした。
「あと、これをつけます」
言うと、彼女は自分の髪を結わいている髪紐をするするとほどいた。
ふさっと、彼女の美しい黒髪が周囲に広がる。
肩口まで広がった艶やかな黒髪はどこまでも美しく、斉藤はそれに見ほれてしまった。
「ほら、もう一回頭下げて」
月村は言いながら、その髪紐を斉藤の首輪に結わえて取り付けた。
それを手にもって、一、二度、ぐいぐいとひっぱる。
髪紐は斉藤の首輪からはずれることなく、しっかりと固定され、斉藤の首が月村の動きにあわせて引っ張られた。
「陽子様、これは」
「え? 散歩用の紐だよ。外に出るんだから、首輪には紐つけとかなくちゃいけないじゃない」
「そ、そんな」
この格好で学校まで行くというのか。
斉藤は心の中で驚愕していた。同級生の女の子に首輪とリードをつけられ、それを握られて歩いていく。
自分の行動の自由なんてまったくない。
ただただ、彼女の思うがままに動くしかないという束縛。
その象徴的な光景に、斉藤はぐっと唾を飲み込んで耐えるしかなかった。
「それじゃあ、いこっか」
月村が言って、髪紐をひっぱった。
ぐいっと、斉藤の首が月村のほうにたぐり寄せられ、体勢が崩れてしまう。
既に歩き出した月村に引っ張られて、彼女の歩調になんとか合わせながら、斉藤は月村につき従って行った。
*
寮から学校までの道のりは斉藤にとって地獄だった。
周囲の道には、女子生徒はもちろんのこと、男子生徒もいる。
そんな彼女・彼らから注目の的ととなり、どこかからは嘲笑まで聞こえてくる。
女子生徒の中には写真をとるものまでいて、遠くからは「私もやってみよ」と言う声さえ聞こえた。
そんな中、月村は終始ご機嫌で、満面の笑みを浮かべていた。
対照的に、斉藤はうなだれ、顔が見えないように肩を下げて猫背になり下を向いて歩くしかなかった。
そのみすぼらしい姿はまさに奴隷商人に買われて連れていかれる奴隷そのもので、周囲の女子生徒の嘲笑を誘うのだった。
学校に到着しても、月村は解放してくれない。
そのまま廊下を歩いていく。
ちらほらと、知った顔も現れはじめ、みんなは斉藤の姿に気づくと一様に驚きの表情を浮かべていた。
今すぐにここを立ち去りたいと斉藤は思うのだが、月村にリードを握られ、ぐいぐいと引っ張られるので、それも叶わない。
自分たちの教室の前まで到着する。
月村は一瞬、背後の斉藤に振り返ると、意味深な視線をむけ、教室のドアを開けた。
「おはよー」
月村が笑顔と共に教室に入る。
その手には髪紐のリードを握っており、その先には斉藤が繋がれている。
その衝撃的な光景に、教室中の生徒の視線は釘付けとなった。
「ほら、斉藤くん、かがんでよ」
言って、月村は斉藤の首から髪紐をほどいた。
そして、斉藤に見せつけるように、その髪紐でまた、自分の髪を結わいていく。
さきほどまで、斉藤の自由を奪っていた髪紐を、美しい髪に備え、整える。
長かった髪を結わいて短くまとめた彼女の姿は、支配者というよりは、幼さを感じさせるものだった。
対等であるはずの同級生。
学び舎を同じくした仲間。
そんな様子と、さきほどまでの支配者としてのギャップに、斉藤はドクンと心臓の鼓動をはやめた。
「はい、よくできました。えらかったね」
そう言って、彼女は斉藤の頭を撫でた。
そして、自分の席へと行ってしまう。
彼女の席にはすでにクラスメイトの女の子たちが全員待ちかまえていて、まるでスターを迎えるかのようにテンションがあがっているのが分かった。
教室のかたすみで、女の子たちが集まって、月村のことを囲んでいる。
楽しそうに談笑を始めた彼女たち。
その会話の内容がどのようなものなのかは、彼女たちがときおり自分のことを見据え爆笑しているのを見れば、すぐに分かった。
「ねえ、斉藤くん、ちょっときてくれる?」
教室の片隅から、月村が斉藤に対して言った。
斉藤はこれから自分を待ち受けるだろう災難を思って一瞬だけ黙り、そしてゆっくりと月村のほうへと歩いていった。
女の子たちが、ニヤニヤと笑いながら自分のことを見つめている。
「なんでしょうか、陽子様」
きゃははっ。
斉藤の言葉に、爆笑があがった。
「様! 様づけだよ斉藤ってば」
「すっかり調教されちゃったんですね」
「なさけなー」
嘲笑の笑みを浮かべて、同級生の女の子から見下ろされる。
恥ずかしくて、斉藤は顔を赤くして下を向いた。
「斉藤くん、こっちにきて正座しなさい」
月村はそれでも斉藤のことを許すつもりはなかった。
絶望にかられながらも、斉藤は月村の足下まで移動し、そこで膝をついて正座した。
月村は椅子に座っている。
周囲には立ち上がった同級生の女の子たち。
女性の壁に、斉藤は取り囲まれ、見下ろされていた。
「靴、脱がして」
右足を斉藤に差し出して月村が言った。
斉藤は命令に従って、彼女の美しくもたくましい脚から、上履きを取り外した。
「靴下も」
これからなにを命令されるのか、目の前が真っ暗になるほどの絶望を感じながらも、斉藤は月村の言葉に従った。
月村の生足が、こちらを威圧するかのように差し出されている。
「ふふっ、それじゃあ、舐めてもらおうかな。歩いて汗かいちゃったから、綺麗にね」
当然のように言った。
月村はそこで優雅に脚を組んだ。
スカートから伸びる艶めかしい太ももが、さらに淫靡さを増した。
その上に組まれた右脚。
生足に対して、斉藤ができることは最初から決められていた。
「し、失礼します」
斉藤が月村の脚にそっと手をやり、その爪先を口の中に含んだ。
そのまま、ぺろぺろと舌で彼女の脚を舐めあげていく。
調教されているとおり、斉藤はその最中、上目遣いでこちらを見ろしてくる月村の目を仰ぎ見ていた。
周囲からは爆笑があがった。
「きゃははっ、舐めてるよ」
「うわー、やっぱり最低だね」
「受ける。負け犬の目してるし」
周囲を仁王立ちして取り囲む少女たちの言葉。
彼女たちに見下ろされながら、斉藤は月村の脚を丁寧に舐めていく。
屈辱のあまり、目からは涙がぽろぽろとこぼれた。
羞恥心で下を向きたくなるが、月村によってそれは許されない。
嗜虐的な笑みを浮かべた月村が、地べたに膝まづいている斉藤のことを愉悦をもって見下ろしていた。
斉藤は彼女の目を見つめながら、必死の奉仕をしなくてはならなかった。
「うん、上出来だね」
月村が言った。
斉藤に奉仕をさせてから、既に10分以上が経過していた。
彼女は気まぐれで、斉藤の口の爪先をつっこみ、彼の下を親指と人差し指でぐいっとつまみ上げた。
苦悶の表情と声をもらした斉藤には無頓着に、月村がぐいぐいと斉藤の舌を蹂躙しながら言った。
「ねえ、これなら問題ないでしょ。大丈夫だよね」
周囲の少女たちへの言葉。
それに対して、少女たちは満足そうに頷いて見せた。
「よし、斉藤くん、ありがとね。もういいよ」
つまみ上げていた斉藤の舌をはずし、月村が言った。
解放された斉藤が息も絶え絶えといった様子だった。
それでも彼は、深く頭を下げて、土下座をししてから言った。
「ありがとうございます。陽子様」
その土下座の格好のまま、斉藤は月村の許しをまった。
椅子に座っている美しい少女と、その足下で土下座をする男子。
月村は、一瞬、楽しそうに笑いながら斉藤のことを見下ろしてから、
「うん、よく出来たね」
言って、月村は、さきほどまで斉藤に奉仕させていた生足で、斉藤の後頭部を踏みつけた。
ぐりぐりと脚を動かし、そのまま優しく、斉藤の後頭部を足裏で撫でる。
10秒ほど、その屈辱的な愛撫が続き、全てを許された斉藤は立ち上がった。
そのまま、羞恥心で顔を真っ赤にして、その場を立ち去った。
後ろからは少女たちの嘲笑。
それにさらにグっと心を痛めた斉藤を待っていたのは、教室中から遠慮なく見据えてくる男子たちの視線だった。
痛々しいものを見るような、
下等な生物を見るような、
自分たちとは立場の違う奴隷を見るような、
そんな視線がクラスメイトの男子からも突き刺さり、斉藤は動揺した。
ついこの間まで、自分と変わらない立場だった同級生たち。
笑いあい、冗談を言った級友たち。
そんな彼らが、今、自分のことをあきらかに下に見ていた。
クラスメイトの女の子に調教され、奴隷された男として。
中には、あからさまに嘲笑の表情を浮かべて、こちらを見つめてくる男たちすらいた。
(どうして)
そんな動揺の気持ちをもったまま、斉藤は席へと戻る。
その途中、浅羽の目があった。
部活動も一緒で、ひときわ仲がよかった男。
彼ならば俺の気持ちを分かってくれるのではないか。
そんな淡い思いは、視線があった瞬間、冷たく目をそらした浅羽の態度によって脆くも崩れさった。
浅羽は斉藤が存在しないかのように振る舞い、隣の男と会話を始めた。
斉藤は惨めさと絶望感に襲われながら、自分の席へと戻った。
(続く)